川崎市の弁護士が皆様の相続のお悩みを解決!

武蔵小杉駅より徒歩3分

LINEで相談予約

お電話でのお問い合わせ相続相談の予約フォーム

044-789-5441

平日9:30〜17:30

【2023年民法改正】寄与分や特別受益の主張について期間制限が設けられました!

2022.10.06

法改正の内容

令和3年の民法改正(令和5年4月1日から施行)によって、寄与分・特別受益の主張に期間制限が設けられました。

これまで遺産分割の手続きにおいて、寄与分や特別受益の主張をすることについて期間制限はなく、長期間放置をしていても、後から、寄与分や特別受益の主張をすることは可能でした。

しかし、今回の法改正によって、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割においては、原則として、寄与分や特別受益を考慮した具体的相続分による分割ができなくなり、民法で規定されている法定相続分又は遺言で指定された相続分(指定相続分)で分割することしかできなくなりました(新民法904条の3)。

具体的な効果

以下、具体例をもとに、今回の法改正がもたらす具体的な効果について考えてみます。

被相続人が父親、相続人が長男及び次男のケース(父親が亡くなる前に母親は死亡)で、被相続人が1億円の不動産と預貯金2,000万円を有して死亡しました(遺言なし)。ところが、父親は、死亡する5年前、長男が家を建てるときに、3,000万円を援助していました。

この場合に、次男が長男について3,000万円の特別受益を主張すると、みなし相続財産は1億円(不動産)+2,000万円(預貯金)+3,000万円(特別受益の持ち戻し)=1億5,000万円となり、これを2分の1ずつで相続すると各自の取り分は7,500万円ずつとなります。

そして、既に長男は3,000万円もらっているので、今回の相続での長男の取り分は7,500万-3,000万=4,500万円、次男の取り分は7,500万円となります(これを前提に1億の土地と2,000万円の預貯金をどう分けるか決めることとなります)。

これまでは、遺産分割協議について時間的な制限がなかったため、父親が亡くなってから、何年経っても、上記のような遺産分割協議をすることができました。

ところが、今回の民法改正によって、もし、父親の死亡から10年経過してから遺産分割協議をしようとすると、次男は、長男の特別受益の主張ができなくなってしまいます。その結果、長男と次男は、父親が死亡時に有していた1億2,000万円のみを、法定相続分の2分の1ずつで分けることになり、各自の取り分は6,000万円ずつとなります(この取り分をもとに1億の土地と2000万円の預貯金をどう分けるかを決めることになります)。次男からすると、父親が亡くなってから10年以内に遺産分割協議をしなかったことで、1500万円損をしてしまうことになります。

したがって、特別受益の主張をしようとする次男は、早期に遺産分割請求をする必要があり、これによって早期に遺産分割請求を促進する効果が期待できます。

今回の法改正がなされた趣旨

上述したように、これまでは、寄与分や特別受益の主張はいつでも可能だったので、早く遺産分割をしなければならないというインセンティブが働かず、事態を放置するケースもままありました。そうしている間に、二次相続・三次相続が起きて、相続関係者が膨大に膨れ上がることも多々ありました。

さらに、相続開始から長期間経過した後になって、寄与分や特別受益の主張をしたとしても、贈与の時期が古すぎて、銀行から履歴を取り寄せることができなかった、などということも起こり得ました。

そこで、今回の法改正によって、寄与分や特別受益を考慮した具体的相続分による分割を求める相続人からの、早期の遺産分割請求を促すため、民法904条の3(経過措置として改正法付則3)が新設され、期間制限(タイムリミット)が設けられたのです。

※ たまに遺産分割自体について期間制限がなされたと勘違いしている方もいますが、それは誤りです。単に、寄与分や特別受益をもとにした具体的相続分の主張が制限されるだけですのでこの点について勘違いしないよう気を付けてください。

例外について

上記のとおり、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割においては、原則として、寄与分や特別受益を考慮した具体的相続分による分割ができなくなり、民法で規定されている法定相続分又は遺言で指定された相続分(指定相続分)で分割することしかできなくなりましたが、例外として、相続開始の時から10年経過した後も、引き続き寄与分や特別受益を考慮した具体的相続分による分割ができる場合もあります。

例外1<10年経過前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をした場合>

相続開始から10年内に遺産分割が終わらなかったとしても、相続開始から10年が経過する前に家庭裁判所に遺産分割請求を行っていれば、その後に相続開始から10年が経過しても具体的相続分を基にした遺産分割を行うことができます。

例外2<期間満了前6か月以内に遺産分割請求をすることができないやむを得ない事由があった場合>

相続開始から10年の期間満了前6か月以内に、家庭裁判所に対して遺産分割請求をすることができない「やむを得ない事由」が相続人にあった場合において、当該事由が消滅したときから6か月が経過する前までに家庭裁判所に遺産分割請求をしたときは、時的限界にかかわらず、具体的相続分による遺産分割を求めることができます。

※やむを得ない事由とは、被相続人が事故で遭難して死亡していたが、その事実が確認できず、遺産分割請求をすることができなかった場合など、限定的な場合が考えられております。

例外3<相続開始10年経過後に相続人全員が合意した場合>

相続開始から10年が経過し、法定相続分又は指定相続分で遺産分割ができるにもかかわらず、共同相続人全員が具体的相続分による遺産分割をすることに合意した場合には、具体的相続分を基に遺産分割を行うことができます。
    
なお、10年の期間制限を超えそうな場合にどの対応をとればいいかという点ですが、例外2、例外3は認められる場合が限られていますので、可能であれば例外1の対応をとっていただくのがよいと考えます。

経過措置(令和3年改正法付則3)

今回の改正では、附則3により経過措置が定められ、法律施行時(令和5年4月1日)以前に被相続人が死亡していた場合にも、さかのぼって効力が及ぶことになっております。もっとも、法改正後いきなりさかのぼって効力が発生すると混乱を招くため、少なくとも施行時から5年の猶予期間を設けるものとされています。

簡単に場合分けをしましたので、ご確認ください。

相続発生日(被相続人死亡日)が令和5年4月1日以降の場合

→相続発生から10年経過時

相続発生日が令和5年4月1日より前

→相続発生から10年経過時または施行時から5年経過時(令和10年4月1日)のいずれか遅い方

まとめ

令和5年4月1日の改正法施行後は、上記で述べてきたルールが適用されることにより、遺産分割についてはこれまで以上に早い時期から具体的相続分による遺産分割を求めて協議が開始されることが多くなると思います。

もっとも、寄与分や特別受益の主張については当事者間で話し合ってももめることが多く、その分野に詳しい弁護士などに相談しながら、調停等に進んでいくことをお勧めします。

当事務所においては、こうした特別受益や寄与分についても、初回60分無料相談を実施しておりますので、不明点がありましたら遠慮なく、当事務所にご相談ください。

【法改正コラム2】遺産共有と通常共有とが併存している場合の特則が制定されました

 

【法改正コラム3】所在等不明の相続人の不動産の持分取得・譲渡についての特則が制定されました
この記事を担当した専門家
神奈川県弁護士会所属 代表弁護士 長谷山 尚城
保有資格弁護士 FP2級 AFP 宅地建物取引士試験合格(平成25年)
専門分野相続・不動産
経歴1998年 東京大学法学部卒業
2000年 司法試験合格
2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)
2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)
2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設
2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長
2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事
2020年~ 法テラス川崎副支部長
専門家紹介はこちら
PAGETOP PAGETOP
60分初回相談無料

044-789-5441

平日9:30〜17:30