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【2023年民法改正コラム2】遺産共有と通常共有とが併存している場合の特則が制定されました

2022.10.28

法改正の基本的内容

令和3年の民法改正(令和5年4月1日から施行)によって、遺産共有と通常共有とが併存する場合においての特則が制定されました。

これまでは、遺産共有と通常共有が併存する共有関係を裁判で解消するためには、

①通常共有持分と遺産共有持分との解消は共有物分割手続で行い、

②遺産共有分割間の解消は遺産分割手続で行う

というように、別個に実施しなければならず、手続的に非常に面倒でした(最高裁昭和62年9月4日第三小法廷判決)。

しかし、今回の法改正によって、相続開始時から10年を経過したときは、相続人から異議等がなければ、遺産共有関係の解消が、地方裁判所等の共有物分割訴訟において実施することが可能とされました(新民法258の2第2項、第3項)。

この改正により、相続開始時から10年を経過した後は、共有物分割手続による一元的処理が可能になり手続が楽になりました。

具体的な効果

以下、具体例をもとに、今回の法改正がもたらす具体的な効果について考えてみます。

事例
土地共有者A・B(持分2分の1ずつ)のうち、Bが死亡し、CとDが相続をしたケースにおいて、共有関係を裁判手続で解消する方法を考えてみましょう。

この場合、法律改正前には、まず1つ目の裁判手続として、CとDとの間で遺産分割調停又は審判によって、遺産共有状態を解消することとなります(今回は、CがDの通常共有持分を取得し、Dが代償金を取得したとします)。

この1つ目の裁判手続によって、土地は、AとCが2分の1ずつの持分を共有することになります。その後、土地の分割方法についてAとCとの間で協議が調わなければ、A又はCのいずれかは2つ目の手続である共有物分割の裁判を起こして判決を得た上で、共有関係の解消を図る必要があります(この事例では、最終的には、Cが単独所有権を取得し、Aが代償金を取得することになりました)。

このように、法律改正前には、最終的に土地の単独所有権を取得することとなったCは、土地を自らの単独所有とするために遺産分割調停又は審判と、共有物分割訴訟という2つの裁判手続を行う必要がありました。

画像の引用元:遺産共有と通常共有が併存している場合の特則

これに対し、法律改正後であれば、相続開始時から10年を経過したときで、かつ、一定の条件を満たした場合であれば、A,C又はDのいずれかが共有物分割の裁判を起こすことによって、その手続の中で、Cが土地の単独所有権を取得することが可能となりました(この事例では、遺産分割調停又は審判の手続を経ることなく、共有物分割の裁判の中で、A・Dが代償金を取得することとなります)。 

画像の引用元:遺産共有と通常共有が併存している場合の特則

改正法についての詳しい解説

改正法では、まず、これまでの判例を基本的に維持する趣旨で、「共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について共有物分割訴訟による分割をすることができない」(改正後民法258条の2第1項)という規定が設けられました。

すなわち、共有物について全部もしくは一部が相続財産に属する場合に、共同相続人間で遺産分割をすべきときには、共有物分割訴訟ではなく、遺産分割の手続の中で対応すべきという原則が確認されました。

その上で、改正法では、例外的場合として、遺産共有持分と通常共有持分とが併存する共有物について、「相続開始の時から十年を経過したときは、前項の規定(注:改正後民放258条の2第1項)にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定(注:共有物分割訴訟)による分割をすることができる」(改正後民法258条の2第2項本文)という規定が設けられました。

ここで「相続開始の時から10年を経過した」ことが要件とされているのは、例外規定を無制限に適用してしまうと、相続人に認められている遺産分割上の権利(具体的相続分による分割を求める権利など)が害されてしまうためです。

なお、具体的相続分については、相続開始の時から10年を経過したときに確定することになります。詳細は、本ウェブサイト内のコラム「寄与分や特別受益の主張について期間制限が設けられました!」の中で説明しておりますのでご参照ください。

さらに、前記第2項の場合において、相続開始の時から10年を経過したときであっても、「当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割(注:共有物分割訴訟による分割)をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない」(改正後民法258条の2第2項ただし書)という規定が設けられています。そのため、共有物分割訴訟により、遺産共有持分の分割ができる場合は、相続人の異議がないことも条件になっています。

なお、相続人が異議の申出をする場合には、共有物分割訴訟が係属する裁判所から通知を受けた日から2か月以内に当該裁判所にしなければならないと規定されました(改正後民法258条の2第3項)。この「通知を受けた日」とは、当該相続人が訴状の送達を受けた日になると解されます。

まとめ

最高裁昭和62年9月4日第三小法廷判決の判例法理によれば、遺産共有と通常共有が併存する共有関係が存在する場合、遺産共有状態を解消するためには遺産分割協議や調停・審判を経る必要があり、これらの手続がとられない場合には、いつまで経っても遺産分割未了(=遺産共有)の状態が続いてしまうという問題がありました。

しかし、本改正によって、遺産共有と通常共有が併存する共有関係が存在する場合であっても、相続開始から10年間、遺産分割未了の状態が続いた場合には、遺産分割協議や調停・審判の手続を経ずに、共有物分割訴訟の手続によって、共有関係を完全に解消することができることになります。

遺産分割調停や審判においては、相続財産全体を把握する必要があることに加えて、寄与分や特別受益についての主張が出てきた場合、その審理事項が多岐に及び、解決までの時間がかかることも少なくありません。しかし、共有物分割の裁判であれば、共有物のみを判断すれば良く、また寄与分や特別受益なども考慮する必要がないため、迅速な審理が期待できることとなります。

当事務所においては、こうした遺産共有と通常共有が混在しているケースについても、 迅速な解決 に向けた選択肢をご提案するための 初回60分無料相談 を実施しております。ご不明な点がありましたら、ご遠慮なく、当事務所にご相談ください。

【法改正コラム1】寄与分や特別受益の主張について期間制限が設けられました

 

【法改正コラム3】所在等不明の相続人の不動産の持分取得・譲渡についての特則が制定されました
この記事を担当した専門家
神奈川県弁護士会所属 代表弁護士 長谷山 尚城
保有資格弁護士 FP2級 AFP 宅地建物取引士試験合格(平成25年)
専門分野相続・不動産
経歴1998年 東京大学法学部卒業
2000年 司法試験合格
2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)
2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)
2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設
2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長
2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事
2020年~ 法テラス川崎副支部長
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