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実家の分割で揉めている間の相続税はどうなる?申告期限10か月と小規模宅地等の特例を弁護士兼税理士が解説

2026.09.30
実家の分割で揉めている間の相続税はどうなる?申告期限10か月と小規模宅地等の特例を弁護士兼税理士が解説

親の遺産の中心が実家で、兄が住み続けている。遺産分割がまとまらないまま、相続税の申告期限が近づいてくる。こうした場面では、分割の進め方によって相続税の額が変わることがあります。本コラムでは、実家の遺産分割と相続税の関係として、申告期限、小規模宅地等の特例、分割が遅れた場合の手続を、川崎・武蔵小杉で相続を扱う弁護士兼税理士が解説します。

 

【結論】

相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月で、遺産分割が終わっていなくても延びません。分割が終わっていない状態の申告では、実家の土地の評価額を330平方メートルまで80%減額できる小規模宅地等の特例を使えません。ただし、申告期限から3年以内に分割すれば、原則として、更正の請求で特例を適用できます。

 

実家の相続で、相続税がかかるのはどんな場合か?

相続税は、遺産の合計額が基礎控除額を超える場合にかかります。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。たとえば、法定相続人が兄と弟の2人なら、基礎控除額は4,200万円です。

実家の土地の評価額が高い地域では、預貯金が少なくても、不動産の評価額のみで基礎控除を超えることがあります。遺産が基礎控除額以下なら、相続税はかからず、申告も不要です。一方、次に説明する特例を使って税額をゼロにする場合は、特例の適用を受けるために申告が必要です。

申告期限は10か月。遺産分割が終わっていなくても申告が必要

相続税の申告と納税は、亡くなったことを知った日(通常は死亡日)の翌日から10か月以内に行います。遺産分割がまとまっていないという理由では、期限は延びません。

分割が終わっていない財産は、各相続人が法定相続分などで取得したものとして税額を計算し、申告と納税をします。この申告では、小規模宅地等の特例と、配偶者の税額軽減を使えません。そのため、分割が終わった後の申告に比べて、税額が高くなることがあります。税額が高くなった分も、期限までに納める必要があります。

分割が成立した後は、実際の分割内容に基づいて、修正申告または更正の請求ができます。税額が増える場合は修正申告、減る場合は更正の請求です。

小規模宅地等の特例とは?実家の土地の評価額が80%減額される仕組み

小規模宅地等の特例は、亡くなった人が住んでいた土地について、一定の面積まで相続税の評価額を減額する制度です。自宅の土地(特定居住用宅地等)は、330平方メートルまで80%減額されます。

たとえば、遺産が実家の土地(評価額5,000万円)と預貯金1,000万円のみで、相続人が兄と弟の2人だとします(配偶者はおらず、建物や他の財産は考えません)。基礎控除額は4,200万円です。特例を使えない場合、課税価格は6,000万円で、相続税は合計約180万円です。特例を使えると、土地は1,000万円として計算するため、課税価格は2,000万円で基礎控除額を下回り、相続税はゼロになります。ただし、税額がゼロでも、特例を使うためには申告が必要です。

特例を使えるかどうかは、誰が取得するかで決まります。配偶者が取得する場合は、取得者ごとの要件はありません。亡くなった人と同居していた親族が取得する場合は、相続開始の直前から申告期限まで引き続きその建物に住み、申告期限までその土地を持ち続けていることが必要です。

兄が親と同居していた場合、兄が実家を取得して住み続ければ、この要件を満たします。反対に、兄が親と同居していなかった場合や、兄が実家を取得しない場合、兄にこの特例は使えません。同居していない親族向けの、いわゆる「家なき子」の特例もありますが、亡くなった人に配偶者がいないこと、同居していた相続人がいないこと、相続開始前3年以内に自分や親族などが所有する家屋に住んだことがないことなど、要件が厳しく、兄が同居していた実家では、他の相続人は使えません。要件が細かく、判断を誤りやすいため、自己判断せず、税理士に確認してください。

特例は、要件を満たす相続人が取得した持分の割合に応じた部分にのみ適用されます。兄と弟が実家を共有で取得した場合は、兄の持分に対応する部分のみが減額の対象です。

特例の適用を受けるには、相続税の申告書に適用を受ける旨を記載し、明細書や遺産分割協議書の写しなどを添付します。特例の対象になり得る土地を取得した相続人が2人以上いる場合は、適用する土地の選択について全員の同意が必要で、原則として申告期限までに分割が終わっていなければなりません。

申告期限までに遺産分割ができなかった場合の対処法

兄が協議に応じないなどで、申告期限までに分割が間に合わなくても、特例を使える余地を残す手続があります。

1.未分割のまま申告する。

相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して、申告と納税をします。見込書には、分割できていない理由と、今後の見込み(家庭裁判所への調停の申立てなど)を書きます。

2.3年以内に分割したら、更正の請求をする。

申告期限から3年以内に分割が成立した場合は、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をします。特例を適用した税額に直し、納めすぎた分の還付を受けます。

3.3年以内に終わらないときは、承認申請をする。

相続に関する訴えが起こされているなど、分割できなかったことにやむを得ない事情がある場合は、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに、承認申請書を税務署長に提出して、承認を受けます。

見込書を添付しないと、後で分割が成立しても特例を使えないおそれがあります。分割がまとまらない見通しのときは、申告期限の前に、税理士への相談と並行して、遺産分割調停の申立ても検討してください。

分割方法によって、税金の面でどう変わるか?

実家を誰が取得し、どう分けるかで、特例の使える範囲が変わります。兄が実家に住んでいる場合の、代表的な3つの分け方を比べます。

項目

兄が取得する(代償分割)

売却して代金を分ける(換価分割)

兄と弟の共有にする

小規模宅地等の特例

兄が同居親族の要件を満たせば、兄の取得分に適用できる

申告期限までに売却すると、取得者が居住・保有を続けられず、使えない

要件を満たす兄の持分に対応する部分のみ適用できる

売却時の税金

兄が住み続ける間は生じない

売却益に譲渡所得税がかかる場合がある

売却時に、各人の持分に応じて譲渡所得税がかかる場合がある

注意点

他の相続人への代償金の支払原資の確保が必要

住んでいる兄の退去が必要

共有状態が残り、売却や利用に全員の合意が必要

 

代償分割では、代償金を支払う側と受け取る側の双方で、相続税の計算に特有の扱いがあります。代償金の額を決める前に、税額を試算しておくことをお勧めします。

換価分割で売却する場合の進め方と、売却時の税金は、関連コラム「実家を売却して分ける換価分割の進め方、住んでいる相続人が退去しないときの対処法と税金」で解説します。

よくあるご質問

Q.相続税がかからない場合も、申告は必要ですか?

A.遺産が基礎控除額以下なら、相続税はかからず、申告も不要です。小規模宅地等の特例などを使って税額をゼロにする場合は、特例の適用を受けるために、申告が必要です。

Q.遺産分割がまとまらないまま申告期限が来たら、どうすればよいですか?

A.未分割のまま、期限内に申告と納税をします。その際、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。申告期限から3年以内に分割が成立したら、4か月以内に更正の請求をして、特例を適用できます。

Q.兄が住んでいる実家を、弟の私が取得すると、小規模宅地等の特例は使えますか?

A.弟が亡くなった親と同居していなかった場合、同居親族の要件に当たらず、原則として使えません。同居していた相続人(兄)がいると、「家なき子」の特例も使えません。特例を使えるかは、誰が同居していたかで決まるため、分割案を決める前に確認してください。

Q.分割見込書を出したのに、3年以内に分割できなかったらどうなりますか?

A.訴えの提起など、やむを得ない事情がある場合は、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに承認申請書を提出し、承認を受けると、特例を適用できる余地が残ります。期限が短いため、早めに税理士へ相談してください。

実家の遺産分割と相続税でお悩みなら当事務所へご相談を

実家の遺産分割は、交渉の進め方と相続税の申告期限が、同時に動く問題です。当事務所は、遺産分割の交渉と相続税の見通しを、同じ窓口で検討します。「兄が協議に応じない」「申告期限までに間に合わない」という方は、早めにご相談ください。

弁護士兼税理士が、分割と税金を一緒に検討

代表の長谷山は弁護士兼税理士で、弁護士登録から20年以上、2025年度には神奈川県弁護士会の副会長を務めました。分割案ごとの税額を試算してから、協議や調停に臨めます。

元非常勤裁判官が在籍するチーム体制

弁護士7名、家庭裁判所の元非常勤裁判官が在籍しています。相続案件は2名以上の弁護士のチームで担当します。

相続登記まで窓口を一本化

司法書士と連携し、遺産分割の成立後の相続登記まで、当事務所が窓口となって進めます。

初回相談は60分無料です。まずは、実家の固定資産税の納税通知書と、相続人の関係が分かる資料をお手元にご用意のうえ、ご予約ください。

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この記事を担当した専門家
神奈川県弁護士会所属(登録番号29971)
東京地方税理士会所属(登録番号159302)
代表弁護士・税理士 長谷山 尚城
保有資格弁護士 税理士 FP2級 AFP
宅地建物取引士試験合格(平成25年)
専門分野相続・不動産
経歴1998年 東京大学法学部卒業
2000年 司法試験合格
2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)
2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)
2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設
2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長
2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事
2020-23年 法テラス川崎副支部長
2024-25年 法テラス神奈川副所長
2025年度 神奈川県弁護士会副会長
2026年  税理士登録
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