実家を売却して分ける「換価分割」の進め方|住んでいる相続人が退去しないときの対処法と税金を弁護士兼税理士が解説
- 2026.09.30

実家を売って代金を相続人で分けたいのに、兄が住み続けていて話が進まない。こうしたご相談は少なくありません。実家を売却して代金を分ける方法を「換価分割」といい、相続人全員の合意、住んでいる相続人の退去、売却後の税金の見通しが欠かせません。本コラムでは、換価分割の進め方、退去に応じない相続人への対処法、売却時の税金を、川崎・武蔵小杉で相続を扱う弁護士兼税理士が解説します。
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【結論】 換価分割は、相続人全員の合意があれば選べます。住んでいる相続人が退去に応じない場合は、引越費用や猶予期間などの条件を示して交渉し、まとまらなければ遺産分割調停を申し立てます。実家を売却すると譲渡所得税がかかる場合があり、空き家の3,000万円特別控除は、相続人が住み続けている実家には使えません。 |
換価分割とは?他の分け方との違い
遺産の分け方は、大きく4つあります。
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分け方 |
内容 |
向いている場合 |
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現物分割 |
遺産をそのままの形で分ける(実家は1人が取得し、預貯金は別の人が取得するなど) |
分けやすい遺産が複数ある場合 |
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代償分割 |
1人が実家を取得し、他の相続人に代償金(現金)を支払う |
実家を取得する人が、代償金を用意できる場合 |
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換価分割 |
実家を売却し、売却代金から費用を差し引いて分ける |
誰も実家に住まず、代償金の用意も難しい場合 |
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共有分割 |
実家を相続人全員の共有にする |
結論を先送りする場合(将来の売却や利用に全員の合意が必要) |
換価分割は、実家を売却し、売却代金から費用を差し引いて、遺産分割で定めた割合で分ける方法です。金額で公平に分けやすい一方、実家を手放すことになります。
実家の全体を売却する行為は、共有者全員の同意が必要と解されています(民法251条)。相続人の1人が反対すれば、任意の売却は進みません。自分の持分のみを売ることはできますが、買い手が限られ、価格も低くなりやすいのが実情です。
住んでいる相続人が退去しないときの対処法
最初に押さえておきたいのは、住んでいる相続人の居住が認められている期間です。親の生前から同居し、親も認めていた相続人には、遺産分割が終わるまで、無償で住み続ける使用貸借が続くと考えられます(最判平成8年12月17日)。そのため、遺産分割が成立する前に、明渡しを求めることは原則としてできません。詳しくは、関連コラム「親が死んだ後も実家に住み続ける兄に家賃の請求はできるのか?」(公開後にリンクを設定)で解説しています。
換価分割を進めるには、住んでいる相続人が納得できる条件を示す交渉が中心になります。
売却代金から、引越費用を先に支払う
退去までの猶予期間(たとえば半年)を設ける
住み続けたい理由を聞き、代償分割で取得できないか、資金の調達方法(金融機関の融資など)も併せて検討する
売却価格に不信感がある場合は、複数の不動産会社の査定を、相続人全員で共有する
合意できないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。調停では、調停委員が間に入って話し合い、換価分割で合意すれば、調停調書が作られます。調停が不成立になると、審判に移ります。審判では、現物分割や代償分割がいずれも相当でない場合などに、裁判所が実家の競売による換価を命じることがあります。競売では、裁判所が不動産鑑定士の評価に基づいて売却基準価額を定めます。売却基準価額は、内覧の制限や明渡しリスクなど競売特有の事情を反映するため、市場価格より低く算定されるのが一般的です。このため、通常の売却より価格が低くなりやすいとされています。競売を避け、任意売却でまとめられるかを、調停の中で検討します。
遺産分割が成立し、売却が決まった後は、退去の期限を合意書や調停条項に明記します。期限を過ぎても退去しない場合は、明渡しを求める手続が必要になるため、あらかじめ期限と、遅れた場合の取扱いを決めておくと争いを減らせます。
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実家の売却に、住んでいる相続人が応じないときは 実家の登記事項証明書や、これまでの話し合いの経過が分かるメール・LINEをお持ちのうえ、武蔵小杉駅から徒歩3分の当事務所へご相談ください。弁護士が交渉の窓口となり、調停の申立てまで一貫して対応します。初回相談は60分無料です。 電話:044-789-5441(平日9:30〜17:30) |
売却の流れ:相続登記から代金の分配まで
実家の売却は、次の順で進めます。
1.相続登記をする。
実家の名義が亡くなった方のままでは、売却できません。まず、相続登記(名義変更)が必要です。相続登記は義務で、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、遺産分割が成立した場合は成立の日から3年以内に申請します。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります。司法書士と連携して進めます。
2.査定を取る。
複数の不動産会社に査定を依頼し、査定書を相続人全員で共有します。売却価格をめぐる対立を防げます。
3.媒介契約を結び、売却活動をする。
相続人全員の合意で不動産会社を選び、売却を依頼します。住んでいる相続人がいる場合は、内覧の日程や引渡しの時期を、事前に調整します。
4.売買契約を結び、引き渡す。
引渡しの日までに、住んでいる相続人の退去を終えます。決済と同時に、買主への所有権移転登記を行います。
5.売却代金を分配する。
売却代金から、仲介手数料、登記費用、測量費などの売却費用を差し引き、遺産分割で定めた割合で分けます。立て替えた固定資産税や、合意した引越費用があれば、先に精算します。特別受益や寄与分があれば、それを反映した割合になります。分配の方法は、遺産分割協議書に明記します。
【税理士の視点】実家を売却したときの税金と特例
実家を売って利益(譲渡所得)が出ると、所得税と住民税がかかります。譲渡所得は「売却代金−(取得費+譲渡費用)」で計算します。取得費には、亡くなった方が実家を買ったときの代金などを引き継ぎ、取得費が分からない場合は、売却代金の5%を取得費にできます。譲渡費用は、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代などです。税金は、原則として、各相続人が自分の持分に応じて、確定申告で納めます。
税率は、所有期間で決まります。所有期間は、亡くなった方が実家を取得した時から、売却した年の1月1日までで数えます。5年を超える長期譲渡所得は、所得税15%と住民税5%で、復興特別所得税を加えると合計約20.315%です。5年以下の短期譲渡所得は、所得税30%と住民税9%で、合計約39.63%です。相続では亡くなった方の取得時期を引き継ぐため、実家は多くの場合、長期にあたります。
たとえば、1人の相続人が、自分の持分の売却で、売却代金5,000万円、取得費と譲渡費用の合計3,000万円だったとします。譲渡所得は2,000万円で、長期譲渡所得なら、税額は約406万円です(2,000万円×20.315%)。空き家の特例が使える場合は、譲渡所得について3,000万円まで控除されるため、この例では税額はゼロになります。特例が使えるかどうかで、手元に残る金額が大きく変わります。
税負担を減らす特例として、次の3つを検討します。
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特例 |
主な要件 |
兄が住んでいる(住んでいた)場合 |
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相続税の取得費加算の特例 |
相続税が課税されていること。相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日(おおむね相続後3年10か月)までに売却すること。支払った相続税のうち、売却した財産に対応する分を、取得費に加算できる |
居住の要件はなく、相続税が課税されていれば使える |
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空き家の3,000万円特別控除 |
昭和56年5月31日以前に建築されたこと。相続開始の直前に、亡くなった方以外に居住者がいなかったこと。相続の時から売却の時まで、事業・貸付け・居住の用に供されていないこと。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ令和9年12月31日までに売却すること。売却代金が1億円以下であること。相続人が3人以上の場合は2,000万円 |
兄が同居していた場合や、相続後に兄が住んでいる場合は使えない |
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居住用財産の3,000万円特別控除 |
自分が所有者として住んでいた家屋の売却であること(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合を含む)。親子や夫婦など、特別の関係がある人への売却は対象外 |
所有者として住んでいた兄が、自分の持分を売る場合に使える場合がある。住んでいない他の相続人は使えない |
空き家の特例と、取得費加算の特例は、同じ実家について併用できません。兄が実家に住んでいた場合は、空き家の特例が使えず、税負担の見通しが立てにくくなります。売却の前に、手取額を試算し、換価分割と、兄が実家を取得して住み続ける代償分割とを比べてください。特例を使うには、売却した年の翌年の確定申告で、適用を受ける旨と必要な書類を提出します。
相続税がかかる場合の申告期限と、小規模宅地等の特例については、関連コラム「実家の分割で揉めている間の相続税はどうなる?申告期限10か月と小規模宅地等の特例を弁護士兼税理士が解説」(公開後にリンクを設定)で解説しています。
よくあるご質問
Q.換価分割は、相続人全員が合意しなければできませんか?
A.協議や調停で、任意売却により換価分割をするには、相続人全員の合意が必要です。合意できない場合は、審判で、裁判所が実家の競売による換価を命じることがあります。
Q.売却の前に、相続登記は必要ですか?
A.必要です。名義が亡くなった方のままでは、買主に所有権を移せません。相続登記の申請は義務で、相続で取得したことを知った日から3年以内に行います。
Q.兄が住んでいる実家に、空き家の3,000万円特別控除は使えますか?
A.使えません。相続開始の直前に亡くなった方以外の居住者がいなかったことが要件で、この判定は死亡時点の状態によります。死亡時に兄が同居していた場合は、その後兄が退去しても、この要件を満たせません。これに加え、相続から売却までの間、事業・貸付け・居住の用に供されていないことも必要です。
Q.売却代金は、どのように分けますか?
A.売却代金から売却費用などを差し引き、遺産分割で定めた割合で分けます。特別受益や寄与分があれば、それを反映した割合になります。
実家の売却と遺産分割でお悩みなら当事務所へご相談を
実家の売却は、相続人全員の合意、住んでいる相続人の退去、税金の見通しが、すべてそろって進みます。「兄が退去に応じない」「売却してよいか判断できない」という方は、当事務所が交渉の窓口になります。
弁護士兼税理士が、売却と税金を一緒に検討
代表の長谷山は弁護士兼税理士で、弁護士登録から20年以上、2025年度には神奈川県弁護士会の副会長を務めました。売却した場合の手取額を試算してから、分割案を決められます。
元非常勤裁判官が在籍するチーム体制
弁護士7名、家庭裁判所の元非常勤裁判官が在籍しています。相続案件は2名以上の弁護士のチームで担当します。
相続登記まで窓口を一本化
司法書士と連携し、相続登記から売却後の手続まで、当事務所が窓口となって進めます。
初回相談は60分無料です。まずは、実家の登記事項証明書と、相続人の関係が分かる資料をお手元にご用意のうえ、ご予約ください。
武蔵小杉あおば法律事務所(神奈川県弁護士会所属) 〒211-0004 神奈川県川崎市中原区新丸子東2−925 白誠ビル2階 武蔵小杉駅徒歩3分 電話:044-789-5441(平日9:30〜17:30)
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東京地方税理士会所属(登録番号159302) 代表弁護士・税理士 長谷山 尚城
宅地建物取引士試験合格(平成25年)
2000年 司法試験合格2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事2020-23年 法テラス川崎副支部長2024-25年 法テラス神奈川副所長2025年度 神奈川県弁護士会副会長2026年 税理士登録






















