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被相続人の役員貸付金は相続できる?注意点を弁護士兼税理士が解説!

2026.08.18
役員貸付金の相続

「亡くなった父が自分の会社に貸していたお金(役員貸付金)は、誰がどう相続するのか分からない」

「会社を継がない自分にも、返してもらう権利はあるのだろうか」

川崎市や武蔵小杉周辺で中小企業を経営されていたご家族が亡くなった際、このようなご相談を数多くいただきます。

結論からお伝えすると、被相続人(亡くなった経営者)が会社に対して持っていた貸付金(会社側から見れば役員借入金)は、現金や不動産と同じく「相続財産」となり、相続人が引き継ぎます。

そして最も重要なポイントは、この貸付金債権は、遺産分割協議を待たずに相続開始と同時に法定相続分に応じて各相続人に当然に分割されるという点です。

預貯金のように「相続人全員で協議して分け方を決める」のが原則ではないため、取り扱いを誤ると相続人間の深刻な対立や、思いがけない高額な相続税負担につながります。

本コラムでは、役員貸付金の法的な仕組みやよくあるトラブル、確認・回収方法から税務上の注意点まで、武蔵小杉で相続問題に注力する弁護士兼税理士が分かりやすく解説します。

そもそも役員貸付金とは?(会社の「役員借入金」との違い)

役員貸付金とは、会社のオーナー経営者が、運転資金や設備投資の不足を補うために、自身の個人資産から会社へ貸し付けたお金のことです。

・会社側の帳簿:負債の部に「役員借入金」として計上される
・経営者個人の視点:会社に対する「貸付金債権(お金を返してもらう権利)」となる

中小企業では、資金繰りを円滑にするために経営者個人が会社にお金を貸し付けるケースは非常に一般的です。しかし、経営者が亡くなると、この「会社にお金を返してもらう権利」が相続財産として遺族に引き継がれます。

役員貸付金は「遺産分割協議」を経ずに当然分割される

役員貸付金の相続で、ご相談者様が最も驚かれるのが「法律上の分割の仕組み」です。

法律上の原則(最高裁判所昭和2948日判決)

法律上、貸付金のような金銭債権(可分債権)は、被相続人が亡くなった瞬間(相続開始時)に、各相続人の法定相続分に応じて当然に分割されるとされています(最高裁判所昭和2948日判決)。

ここで注意したいのが、銀行の「預貯金」との違いです。預貯金債権については、最高裁判所平成281219日大法廷決定により「遺産分割協議の対象に含まれる」と判例変更がなされました。しかし、一般的な貸付金債権については、現在も「当然分割される」という原則が適用されます。

「会社を継いだ長男がまとめて処理する」は法的に通らない

たとえば、亡くなった経営者に長男(後継者)と次男(経営に関与していない)の2人の相続人がいるケースを考えてみましょう。

法定相続分が2分の1ずつであれば、次男は相続開始と同時に、長男の同意や遺産分割協議を経ることなく、自身の持分(2分の1)について会社に対して直接「お金を返してほしい」と請求できる権利を得ます。

後継者である長男が「会社を継いだ自分がまとめて処理する」と考えていても、法的には通用せず、会社がいきなり経営に関与していない相続人から返還請求を受けるリスクが生じるのです。

武蔵小杉・川崎エリアで多発する役員貸付金相続の4大トラブル

武蔵小杉・川崎エリアの相続相談でも、役員貸付金をめぐっては次のようなトラブルが頻発しています。

トラブル1:会社の貸付金が返ってこない(後継者が返済を拒む)

後継者となった相続人が「会社の資金繰りが厳しく、返済できる状態ではない」「父が会社のために出したお金なのだから返さなくていいはずだ」と主張し、他の相続人への返済に応じないケースです。しかし、貸付金は明確な法的権利であるため、返済を拒み続けると法的な請求手続きへ発展するおそれがあります。

トラブル2:帳簿を見せてもらえず、貸付金の実額が分からない

会社経営に関わっていない相続人は、そもそも役員貸付金がいくら残っているのか把握できません。後継者や会社側が決算書や総勘定元帳の開示を拒み、話し合いが平行線になるケースも多く見られます。

トラブル3:生前の引き出しが「貸付金」か「使い込み」か判然としない

生前に被相続人の口座からまとまったお金が出金されていた場合、それが「会社への貸付(役員貸付金)」だったのか、特定の相続人による「使い込み(使途不明金)」だったのかで主張が対立することがあります。

トラブル4:現金は手に入らないのに「高額な相続税」だけがかかる

税務上、役員貸付金は原則として「元本残高+未収利息」の額でそのまま相続税評価されます。会社の資金繰りが厳しく実際には回収が難しい状態(回収不能)であっても、額面通りの価値があるものとして相続税が課されるため、手元に現金がない中で納税資金の確保に追われる状況になりやすい点にも注意が必要です。

役員貸付金の存在・金額を確認・回収する具体的な3つの手順

役員貸付金の適切な処理を進めるためには、まず客観的な証拠に基づいて実額を特定する必要があります。

1.決算書・総勘定元帳の確認

会社の決算書にある貸借対照表や、勘定科目内訳明細書(借入金の内訳)を確認します。総勘定元帳の「役員借入金」欄を調べることで、相続開始時点の残高を特定できます。

2.株主としての会計帳簿閲覧請求権(会社法433条)の行使

会社側が任意に決算書等の開示に応じない場合、相続人が株主の立場を兼ねているのであれば、会社法433条に基づく会計帳簿閲覧請求権を行使することを検討します。

要件: 総株主の議決権または発行済株式の3%以上を保有する株主(複数の相続人で合算して3%を満たす場合も可)。

3.税務申告書の確認

被相続人が生前に提出していた確定申告書や、過年度の相続税申告書などから貸付金の存在が判明することもあります。

法律と税務の両面から解決する弁護士兼税理士のアプローチ

役員貸付金の問題は、単に「お金を返してほしい」と請求するだけでは解決しないことが多々あります。会社の資金繰りや相続税の負担まで考慮した多角的なアプローチが必要です。

弁護士兼税理士だからこそ可能な3つの解決処方箋

① 回収不能な貸付金の「相続税評価減額」を検討する

② 生前対策・相続後の処理(DES・債務免除)でリスクを遮断する

③ 遺産分割調停や法的手段でトータル解決を目指す

回収不能な貸付金の相続税評価減額を検討する

会社の財務状況が著しく悪化しているなど、貸付金の回収が客観的に困難と認められる場合、財産評価基本通達に基づき、相続税評価額を減額(場合によっては大幅な評価減)できる可能性があります。会社の決算内容や資産状況を裏付ける客観的な証明資料を準備したうえで、税務署に対して適切な主張を行うことが重要です。

生前対策・相続後の処理(DESや債務免除)でリスクを遮断する

生前の段階であれば、貸付金を株式に振り替える「デット・エクイティ・スワップ(DES)」や、適切な手続きを踏んだ債務免除を行うことで、貸付金そのものを減らし、将来の相続トラブルや相続税負担を予防できる場合があります。ただし、DESは株式評価額によってはかえって相続税負担が増えることもあるため、実行前に専門家による評価が必要です。

遺産分割調停や法的手段でトータル解決を目指す

話し合いによる解決が難しい場合は、家庭裁判所での遺産分割調停(他の不動産や預貯金との一括調整)や、使途不明金についての不当利得返還請求・損害賠償請求など、法的手続きを用いて権利の実現を図ります。

役員貸付金の相続に関するよくある質問

Q1.役員貸付金は「相続放棄」をすれば関係なくなりますか?

A.はい、関係なくなります。家庭裁判所で相続放棄の手続きをすれば、貸付金債権(プラスの財産)を受け取る権利も失いますが、その他の借入金などの負債(マイナスの財産)を引き継ぐこともなくなります。ただし、相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に行う必要があり、特定の財産だけを放棄することはできません。

Q2.会社側から「消滅時効だ」と主張されたらどうすればよいですか?

A.決算書への計上などにより、時効が更新(リセット)されている可能性があります。金銭債権の消滅時効は原則として「権利を行使できることを知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」のいずれか早い方です(民法1661項)。会社が毎年作成する決算書に「役員借入金」として継続的に記載していた場合、民法1521項が定める「債務の承認」にあたると評価され、時効が更新されている可能性があります。ただし該当性は個々の事情によるため、専門家による確認をおすすめします。

Q3.相続税の申告期限までに返済してもらえない場合、どうなりますか?

A.原則として、未回収のまま相続税の課税対象となります。相続税の申告・納税期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」です。この期限までに会社から返済を受けていなくても、貸付金債権はそのまま財産として評価され、相続税が計算されます。納税資金の確保も含めて、早めに専門家へご相談いただくことをおすすめします。

川崎・武蔵小杉で役員貸付金・事業承継の相続にお悩みの方へ

役員貸付金が絡む相続は、法律上の権利関係(民法・会社法)と、相続税評価等の税務判断が密接に絡み合うため、一般的な相続トラブルよりも極めて専門性の高い分野です。

当事務所は、武蔵小杉に拠点を構え、川崎市および神奈川県内で累計800件を超える相続のご相談をお受けしてまいりました。現在、弁護士7名・事務職8名の体制で、地域に根ざした質の高いリーガルサービスを提供しております。

代表弁護士は200210月の弁護士登録以来、相続案件を中心に手がけており、2025年度には神奈川県弁護士会の副会長を務めました。さらに、相続税の実務にも長年携わってきた経験を活かし、20266月には税理士登録も完了しております。

また、当事務所では建設業・医療法人・不動産会社など多業種にわたる中小企業様の顧問弁護士を務めております。日々オーナー経営者様のリアルな現場に寄り添っているからこそ、「法的な権利主張」と「会社の資金繰り・存続」、そして「ご親族の感情」のすべてに配慮した現実的かつ最適な解決策をご提示できることが、当事務所の強みです。

・会社の帳簿を見せてもらえず困っている
・返済されない貸付金のせいで、高額な相続税がかかりそうで不安だ
・後継者として、他の相続人から返済請求を受けて対応に困っている

このようなお悩みをお持ちの方は、一人で抱え込まず、まずは当事務所の初回ご相談をご利用ください。弁護士・税理士の両面から、あなたとご家族、そして会社を守るための最良のロードマップをご提案いたします。

▶ 関連コラム:被相続人が投資家だった場合の遺産分割とは?

この記事を担当した専門家
神奈川県弁護士会所属 代表弁護士 長谷山 尚城
保有資格弁護士 税理士 FP2級 AFP
宅地建物取引士試験合格(平成25年)
専門分野相続・不動産
経歴1998年 東京大学法学部卒業
2000年 司法試験合格
2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)
2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)
2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設
2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長
2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事
2020-23年 法テラス川崎副支部長
2024-25年 法テラス神奈川副所長
2025年度 神奈川県弁護士会副会長
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