川崎の生産緑地を相続したら?2022年問題・特定生産緑地と相続の注意点を弁護士が解説
- 2026.07.28

川崎市で農地を相続するとき、宅地や預貯金の相続にはない独特の落とし穴になりやすいのが生産緑地です。川崎市内(特に中原区・高津区・宮前区など)の農地は、その大半が住宅街の中に位置しています。「周囲は住宅地なのに、ここだけポツンと畑が残っている」という、都市型農地特有の風景です。一見すると普通の宅地に見えるこうした土地ほど、相続では生産緑地という制度が絡んで判断が難しくなります。
「ずっと農地だと思っていたら、特定生産緑地の手続きを忘れていて固定資産税が跳ね上がった」「親が使っていた相続税の納税猶予が、自分の代では使えなかった」
こうした事態は、仕組みを知らないまま相続を迎えると現実に起こり得ます。本コラムでは、生産緑地と「2022年問題」・特定生産緑地の関係を整理し、川崎市の地域事情を踏まえて相続時の注意点を解説します。
生産緑地とは?「2022年問題」とは何だったのか
生産緑地とは、三大都市圏の特定市の市街化区域内にある農地のうち、市町村の指定を受けたものです。指定を受けると、原則として30年間の営農(農地として管理する)義務を負う代わりに、固定資産税が宅地並みではなく農地として課税され(負担が大きく軽減)、相続税・贈与税の納税猶予の対象にもなります。
1992年(平成4年)の生産緑地法改正で指定された生産緑地の多くが、30年を迎える2022年に一斉に営農義務を終え、買取り申出が可能になりました。これが一斉に宅地化されれば地価が急落しかねない、と懸念されたのがいわゆる「生産緑地の2022年問題」です。
特定生産緑地制度——「10年延長」の仕組み
この2022年問題への対応として2017年(平成29年)の法改正で創設されたのが、特定生産緑地制度です。指定から30年を迎える前に所有者が同意して指定を受ければ、買取り申出ができる時期を10年延長でき、その後も10年ごとに繰り返し延長できます。延長された期間中は、従来の固定資産税の軽減や相続税の納税猶予がそのまま継続します。
結果として、全国の生産緑地の多く(約9割といわれます)が特定生産緑地への移行を選び、懸念された地価の急落は現実化しませんでした。あれから4年が経過した現在、問題は「消えた」のではなく、各所有者の延長判断によって先送り・分散されたというのが実情です。
相続の場面でなぜ重要か——3つの落とし穴
【落とし穴1:特定生産緑地に「しなかった」生産緑地は、次の相続で納税猶予が使えない】
30年経過時に特定生産緑地の指定を受けなかった生産緑地は、いま納税猶予を受けている本人の代は猶予が継続しても、次の相続では新たな納税猶予の対象から外れます。被相続人がどちらを選んでいたかによって、相続人の税負担が大きく変わります。
【落とし穴2:固定資産税が5年かけて宅地並みへ】
特定生産緑地の指定を受けなかった場合、30年経過後は激変緩和措置として5年かけて段階的に固定資産税が宅地並み課税へ引き上げられます。「農地のままなのに税金だけ宅地並み」という状態になり得ます。
【落とし穴3:納税猶予中に売却・転用すると、その分の相続税+利子税がかかる】
生産緑地の相続税納税猶予は、原則として「亡くなるまで農業を続けること(終身営農)」が条件です。猶予を受けた農地を売ったり転用したりすると、たとえ一部であっても、その部分について猶予されていた相続税を利子税とあわせて納めることになります。さらに、譲渡・転用・貸付け・耕作放棄などをした面積が猶予対象農地の20%を超えると、その部分だけでなく猶予の全額が打ち切られます。「20%以内なら自由に売ってよい」という制度ではない(20%以内でも売った分は課税される)点に、特に注意が必要です。
「自分では農業を続けられないが、農地は維持したい」という場合には、都市農地の貸借円滑化法に基づく貸付け(認定都市農地貸付け等)を使えば、第三者に貸しても営農を廃止したとは扱われず、納税猶予を継続できる道があります。かつては「人に貸したら農業をやめたとみなされて納税猶予が打ち切られる」のが原則でしたが、2018年の法改正で「貸しても猶予を続けられる」よう見直されました。どの選択肢が有利かは、立地・評価・後継者の有無で変わります。
川崎市で生産緑地を相続する場合に押さえたい地域事情
川崎市は、政令指定都市でありながら、宮前区・多摩区・麻生区・高津区などを中心に都市農地が広く残る「都市農業のまち」です。市内の生産緑地は1,554地区・約245.3ヘクタール(令和7年11月時点)にのぼり、市街化区域内農地の相当部分を生産緑地が占めています。相続でこれらの農地に関わる可能性は、決して特殊なケースではありません。
窓口は「都市農業振興センター農地課」
川崎市の場合、生産緑地・特定生産緑地・農地の相続届出に関する実務窓口は、経済労働局 都市農業振興センター 農地課(高津区梶ヶ谷)が中心です。生産緑地地区の都市計画手続きについては、まちづくり局都市計画課も関係します。手続きの種類によって担当が分かれる点に注意が必要です。
川崎市の特定生産緑地・納税猶予に関する実務ポイント
- 納税猶予を受けていても手続きは必要:相続税納税猶予を適用して営農を続ける予定でも、特定生産緑地の指定手続きをしなければ、30年期限後に固定資産税が5年かけて宅地並みへ上昇します(川崎市の案内でも明示)
- 次世代の猶予に直結:特定生産緑地に指定しなかった場合、現に受けている納税猶予は継続しても、次の代の相続では納税猶予を受けられません
- 相続が起きても30年の起算はリセットされない:30年期限前に相続が発生しても、生産緑地指定からの30年の数え方は変わりません
- 面積要件は300㎡に緩和済み:川崎市は条例で生産緑地の面積要件を従来の500㎡から300㎡に引き下げており、小規模な都市農地も指定・維持しやすくなっています
これらは、相続が起きてから慌てて検討するには判断要素が多すぎます。被相続人がご存命のうちに、生産緑地の指定状況・特定生産緑地への移行の有無・納税猶予の適用状況を確認しておくことが、川崎で農地を持つご家庭にとって最大の備えになります。
よくあるご質問
-
相続した農地が「生産緑地」でした。何に注意すればよいですか?
- まず、その生産緑地が特定生産緑地の指定を受けているか、被相続人が相続税の納税猶予を使っていたかを確認してください。特定生産緑地に指定されていないと、次の代の相続で納税猶予が使えず、固定資産税も5年かけて宅地並みに上がります。逆に納税猶予中の農地は、一部を売却・転用しただけでもその部分の相続税と利子税がかかり、譲渡等が20%を超えると猶予の全額が打ち切られます。判断要素が多いため、早めに弁護士・税理士へご相談ください。
-
親はまだ元気ですが、いまのうちにできることはありますか?
- あります。むしろ生前のほうが選択肢は広いです。生産緑地の指定状況、特定生産緑地への移行の有無、納税猶予の適用状況を確認し、「営農を続けるのか・貸すのか・一部を売却するのか」の方針を家族で共有しておくことで、相続時の税負担と紛争リスクの双方を抑えられます。
-
生産緑地を相続したものの、農業を続けられません。手放すしかないですか?
- 手放す以外にも、都市農地の貸借円滑化法に基づく貸付けで、農地を維持しつつ納税猶予を継続する方法があります。猶予中の農地を売却・転用すると、その分の相続税と利子税がかかり(20%超なら全額打切り)負担が大きいため、手放す前に「貸す」選択肢も含めて比較検討することをおすすめします。
川崎で生産緑地の相続にお悩みなら当事務所へ
生産緑地の相続は、不動産・農地法・相続税・遺産分割が複雑に絡み合い、ひとつの判断が次世代の税負担まで左右します。武蔵小杉あおば法律事務所は、川崎の都市農業の地域事情を踏まえ、弁護士と税理士の両資格を活かして、遺産分割から特定生産緑地・納税猶予の検討、貸付け・売却・国庫帰属の出口戦略まで一体でサポートします。
「うちの農地が生産緑地かどうかも分からない」という段階で構いません。手元に図面や固定資産税の通知書がなくても、おおよその場所(住所)がわかれば十分です。「まだ相続は起きていないけれど、将来が不安」という生前のご相談も大歓迎です。武蔵小杉駅から徒歩○分のアクセスしやすい事務所ですので、お仕事帰りなどにもお立ち寄りいただけます。まずはお気軽にご相談ください。
▶ 関連コラム:相続財産調査とは?何から手をつければよいの?
▶ 関連コラム:相続した不動産を売却するための手続き・注意すべき点について
▶ 関連コラム:相続相談を弁護士にするメリット・相談するタイミング

2000年 司法試験合格2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事2020-23年 法テラス川崎副支部長2024-25年 法テラス神奈川副所長2025年~ 神奈川県弁護士会副会長























