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公務員が被相続人の場合の相続の特徴・課題・注意点を弁護士が解説します

2026.06.16
公務員 相続

「親が亡くなったが、公務員だったから財産関係が複雑そうで不安」「死亡退職金は誰が受け取るのか」「遺産分割の対象になるのか」・・・公務員が被相続人となった場合、こうした疑問は非常に多く聞かれます。

公務員はその職業の特性上、民間企業の会社員とは異なる財産や給付制度を持っています。そのため、一般的な相続とは異なる「公務員ならではの注意点」が生じます。本コラムでは、公務員が被相続人(亡くなった方)となった場合の相続の特徴・課題・注意点について、弁護士が解説します。

公務員が被相続人となった相続(公務員相続)の特徴とは?弁護士が解説

公務員が被相続人となった場合の相続には、大きく3つの特徴があります。

「遺産ではない財産」が多い

公務員の相続では、「法律上は遺産に含まれないが相続税の計算には影響する財産」が存在します。代表的なのが死亡退職金と遺族年金です。

死亡退職金は、国家公務員退職手当法などに基づいて支給されるもので、受取人(受給権者)の固有の権利とされており、民法上の「遺産」には含まれません。そのため原則として遺産分割協議の対象外となります。

一方で税務上は「みなし相続財産」として扱われ、相続税の申告が必要になる場合があります。この「遺産ではないが相続税には影響する」という二重構造が、公務員相続を複雑にする大きな要因です。

共済組合という独自の制度がある

公務員は民間企業の厚生年金・健康保険に相当するものとして、共済組合(国家公務員は国家公務員共済組合、地方公務員は各都道府県の共済組合)に加入しています。

この共済組合を通じた給付(遺族年金、死亡一時金、各種保険など)は、民間の生命保険や企業年金とは異なる性質を持ちます。相続発生後に共済組合への手続きを失念すると、受け取れる給付を見逃すことになるため、注意が必要です。

安定収入が長期にわたるため財産が蓄積されやすい

公務員は収入が安定しており、長期勤続による退職金も手厚い傾向があります。さらに財形貯蓄や共済貯金といった制度も利用できるため、相続財産の総額が大きくなる傾向があります。財産が大きくなるほど相続税の課税リスクが高まるため、生前対策を早めに講じておくことが重要です。

公務員相続の課題

基礎控除を超えやすく、相続税がかかりやすい

相続税には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があり、財産の総額がこれを下回れば相続税はかかりません。しかし公務員の場合、退職金・共済貯金・不動産・預貯金などを合わせると財産が大きくなりやすく、基礎控除を超えるケースが少なくありません。

特に注意が必要なのは死亡退職金です。死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられていますが、退職金の額が高い場合はこの非課税枠を超えた部分に相続税が課税されます。退職金の見込み額を把握したうえで、生前から対策を検討することが肝心です。

相続人が公務員の場合は副業規制との関係が生じる

被相続人が公務員であった場合、相続人が不動産などを受け継ぐとき、その相続人が公務員であれば副業規制との関係が問題になることがあります。

この点については、当事務所のコラム「で詳しく解説しています。相続人が公務員の場合は、あわせてご参照ください。

公務員相続の注意点について

死亡退職金の受取人は誰か

公務員が在職中に亡くなった場合、死亡退職金(退職手当)が支給されます。この死亡退職金は遺産ではなく、法律で定められた受給権者(遺族)の固有の権利です。

国家公務員の場合、国家公務員退職手当法により受給権者の優先順位が定められており、配偶者が第一順位、以降は子・父母・孫・祖父母の順とされています。法律や条例で受取人が厳格に指定されているため、遺言書による受取人の変更や指定は原則として認められない(または、極めて限定的な場合にしか認められない)ため、実務上は変更できない前提で動くべきです

死亡退職金のポイントを整理すると次のとおりです。

・遺産分割協議の対象にはならない(受取人が法律で定まっている)

・相続放棄をしても受け取ることができる

・税務上は「みなし相続財産」として扱われ、相続税の申告が必要になる場合がある(非課税枠:500万円×法定相続人の数)

「相続放棄したから死亡退職金も受け取れない」と誤解しているケースが多いため注意してください。

② 共済組合特有の財産を把握する

公務員ならではの財産として、共済組合を通じた以下の給付があります。相続発生後は、これらを漏れなく確認することが重要です。

【遺族(厚生)年金】

2015年(平成27年)の被用者年金一元化により、公務員の年金制度は厚生年金に統合されました。現在は「遺族厚生年金」として請求することになりますが、公務員期間がある場合は手続きの窓口が各共済組合となるケースが一般的です。加入時期によって複雑な経過措置があるため、年金事務所や共済組合への確認が必須です。

なお、遺族(厚生)年金は相続税・所得税ともに課税されません。受取人は法律で定められており、遺産分割の対象外です。

【共済貯金・財形貯蓄】

公務員が共済貯金や財形貯蓄を利用していた場合、これらは相続財産(遺産)として遺産分割協議の対象になります。

注意が必要なのは手続きの煩雑さです。共済貯金の解約・払戻手続きは、一般の銀行口座の相続手続きとは異なり、職場の共済組合担当部署を経由する必要があります。独自の書類が求められるうえ、案内が分かりにくいケースも多く、遺族が被相続人の職場に何度も連絡しなければならない心理的・手続き的な負担は小さくありません。弁護士に依頼することで、こうした手続きの代行・サポートが受けられます(後述)。

【公務災害補償・傷病補償】

公務上の災害や傷病が原因で死亡した場合には、遺族補償年金や遺族補償一時金が支給されることがあります。これらも受給権者の固有の権利であり、遺産分割の対象外ですが、手続きを失念すると受け取れなくなるため注意が必要です。

③ 不動産・副業収入の取り扱い

公務員が所有していた不動産は遺産として遺産分割協議の対象になります。ただし、その不動産を相続人(特に公務員の相続人)が引き継いで賃貸経営を続けようとする場合は、副業規制との関係で制限が生じます。詳細は当事務所のコラム「

公務員相続でよくあるトラブル事例

公務員特有の財産構成が、相続人間の「不公平感」を生みやすいという側面があります。特に多いのが以下のようなケースです。

【トラブル1】死亡退職金をめぐる「不公平感」からくる対立

死亡退職金は遺産分割の対象外であり、法律で定められた受給権者(例:配偶者)が受け取ります。しかし他の相続人から「兄(配偶者)は死亡退職金を全額もらったのだから、残りの預貯金は自分が多く受け取るべきだ」という主張が出ることがあります。法律上は退職金と遺産は別物ですが、感情的に納得できない相続人が協議を拒否し、泥沼化するケースは少なくありません。

【トラブル2】遺族年金の受給権者に関する誤解

「遺族年金も遺産として分けられる」と誤解している相続人がいるケースがあります。実際には遺族年金は受給権者固有の権利であり、遺産分割の対象ではありません。こうした誤解が解消されないまま協議が進むと、後から揉め直しになることがあります。

【トラブル3】共済組合の手続きが長引き、預貯金の分割が滞るケース

共済貯金や財形貯蓄の手続きに時間がかかり、他の財産の分割協議も止まってしまうケースがあります。特に相続人が遠方に住んでいたり、被相続人の職場への連絡に精神的負担を感じていたりする場合、手続きが放置されがちです。弁護士が窓口となって対応を引き受けることで、こうした状況を回避できます。

公務員相続で弁護士を利用するメリットとは?

公務員の相続は、民間企業の相続と比べて財産の種類が多く、かつ「遺産か遺産外か」の切り分けが複雑です。弁護士に依頼することで、次のようなメリットがあります。

【財産の全体像を正確に把握・整理できる】

死亡退職金・遺族年金・共済貯金・不動産など多岐にわたる財産を漏れなく整理し、「遺産か遺産外か」「課税か非課税か」の仕分けを正確に行います。相続人間のトラブルや税務申告のミスを防ぎます。

【共済組合や職場への手続きを代行できる】

共済貯金の解約手続きや各種給付の請求手続きは、独自の書類・経路が求められることが多く、遺族にとって心理的・手続き的に大きな負担となります。弁護士が窓口となって代行することで、遺族の負担を大幅に軽減できます。

【不公平感からくる対立を法的に整理できる】

死亡退職金や遺族年金が遺産外であることを法的に明確に説明し、感情的対立を客観的な視点で整理します。遺産分割協議を迅速かつ公正にまとめることができます。

【生前の相続対策にも対応できる】

財産が大きい公務員の相続では、相続税対策も重要です。遺言書の作成、生前贈与の活用など、弁護士と税理士が連携した対策を生前から行うことで、相続発生後の負担を大幅に軽減できます。

よくあるご質問

▶よくある質問:相続Q&A

公務員相続の相続対策でお悩みの方は当事務所へご相談を

公務員の相続は、死亡退職金・共済組合の給付・副業規制との関係など、一般の相続とは異なる論点が複数絡み合います。知識なく進めてしまうと、受け取れるはずの給付を見逃したり、遺産分割で不必要なトラブルが生じたりするリスクがあります。

武蔵小杉あおば法律事務所では、公務員特有の財産・制度を踏まえたうえで、遺産と遺産外の仕分けから共済組合への手続き代行、税理士等の専門家との連携まで、トータルでサポートしています。「親が公務員だったが相続手続きが複雑でわからない」「相続人間でもめている」といったお悩みをお持ちの方は、まずはお気軽にご相談ください。

関連コラム:不動産相続の注意点と流れについて弁護士が解説

この記事を担当した専門家
神奈川県弁護士会所属 代表弁護士 長谷山 尚城
保有資格弁護士 FP2級 AFP 宅地建物取引士試験合格(平成25年)
専門分野相続・不動産
経歴1998年 東京大学法学部卒業
2000年 司法試験合格
2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)
2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)
2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設
2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長
2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事
2020-23年 法テラス川崎副支部長
2024-25年 法テラス神奈川副所長
2025年~ 神奈川県弁護士会副会長
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