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公務員が収益不動産を相続する際の注意点とは?弁護士が解説

2026.06.09
公務員相続

「親が亡くなり、賃貸マンションを相続することになったが、公務員でも所有し続けられるのか?」

このような相談は、弁護士として何件も受けてきました。公務員の方が不動産を相続する場合、会社員とは異なる注意点があります。知らないまま相続してしまうと、服務規程違反を問われるリスクもあるため、事前の確認が欠かせません。

本コラムでは、公務員が収益不動産を相続する際の注意点について、弁護士がわかりやすく解説します。

公務員の相続と会社員の相続の違いとは?

不動産を相続すること自体は、公務員であっても会社員であっても変わりません。相続は法律上当然に発生するものであり、公務員だからといって相続を拒否しなければならない理由はありません。

ただし、相続した不動産から収益を得る場合、公務員には特別なルールが適用されます。

国家公務員は国家公務員法、地方公務員は地方公務員法によって、兼業(副業)が厳しく制限されています。国家公務員法第103条では「職員は、営利を目的とする私企業を営んではならない」と定め、第104条では報酬を得る兼業には内閣総理大臣および所轄庁の長の許可が必要とされています。地方公務員法第38条も同様に、任命権者の許可なく兼業することを禁じています。

会社員の場合は、勤務先の就業規則に従えばよいだけですが、公務員は法律によって縛られている点が大きな違いです。

そもそも不動産収入は副業に当たるのか

では、相続によって取得した不動産から家賃収入を得ることは、「副業」として禁止されるのでしょうか。

結論からいえば、「規模と収入によって判断が分かれる」というのが答えです。

国家公務員については、人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用通達により、以下の条件をすべて満たす場合は兼業許可が不要とされています。

・賃貸物件の規模が510室未満(戸建ての場合は5棟未満、集合住宅の場合は10室未満)

・年間の賃貸料収入が500万円未満

・物件の管理は管理会社に委託していること

この基準は税務上の「事業的規模」とは切り口が異なります。同じ510室という数字が登場しますが、公務員規制においては「この規模未満であれば許可なく賃貸経営を継続できる」という判断基準として用いられています。

地方公務員については、自治体ごとに規定が異なるため、勤務先の人事担当部署に必ず確認してください。

賃貸物件を相続した場合は?

親が所有していた賃貸アパートやマンションを相続した場合、まず現在の戸数・棟数と年間収入を確認することが最初のステップです。

510室未満かつ年間収入500万円未満であれば、管理を管理会社に任せることで、許可を受けずに賃貸経営を継続できます。

問題となるのは、相続した物件がこの基準を超えている場合です。たとえば、親が10室以上のアパートを所有していた場合、そのまま相続して賃貸経営を続けると服務規程違反に問われる可能性があります。

ただし、「基準を超えたら必ず売却しなければならない」わけではありません。

共同相続人がいる場合は、遺産分割協議で自分が相続する物件の規模を基準内に収めることを検討します。相続人が自分一人の場合など、やむを得ず基準を超えた物件を相続することになったときは、「相続という事情があってやむを得ない」として兼業許可を申請し、所有し続けることが認められるケースもあります。まずは早期に人事担当部署に状況を説明・相談することが重要です。それでも解消が難しい場合には、物件の一部売却を検討することになります。

なお、被相続人の生前から弁護士や税理士などの専門家に相談し、対策を立てておくことが最善の方法です。

駐車場を相続した場合の注意点とは?

親が経営していた駐車場を相続するケースも少なくありません。駐車場については、賃貸住宅と異なる点がいくつかあります。

税務上の事業的規模の判断では、駐車場おおむね5台分が賃貸住宅1室に相当するとされ、50台規模で事業的規模に該当します。しかし、公務員規制においてはさらに厳しく、『駐車可能台数が10台以上』または『年間収入500万円以上』のいずれかに該当すると兼業許可が必要となります。

特に注意が必要なのは、自ら時間貸し駐車場(コインパーキング)を運営・管理している場合です。この場合は「事業所得」とみなされる可能性が高く、副業規制への抵触リスクが高まります。

ただし、タイムズや三井のリパークなどのコインパーキング運営会社に土地を一括で賃貸(いわゆるサブリース形式)する方法に切り替えれば、自ら運営・管理することなく、単なる「土地の賃貸収入」として整理できます。この形であれば副業規制上のリスクを大幅に軽減できる可能性があります。駐車場を相続した場合は、現在の運営形態を確認したうえで、必要に応じて切り替えを検討することをお勧めします。

いずれにせよ、年間収入が500万円未満であることは共通の基準として適用されます。不明な点は勤務先の人事担当部署と専門家に相談してください。

不動産の相続でよくあるトラブル

公務員が不動産を相続する際に、実際によくみられるトラブルを3つご紹介します。

【トラブル1】相続後に収入規模が基準を超えていたと判明するケース

相続が発生したあとに物件の収益状況を確認したところ、年間収入が500万円を超えていたり、室数が10室以上あったりすることが発覚するケースがあります。気づかないまま放置していると、後から服務規程違反を問われるリスクがあります。相続が発生したら速やかに物件の規模と収入を確認することが肝心です。

【トラブル2】遺産分割協議が長引き管理が放置されるケース

公務員に限った話ではありませんが、相続人間で意見が分かれ、遺産分割協議が長引くあいだ、不動産が誰の管理下にもない状態に陥ることがあります。その間もテナントとの賃貸借契約は継続しており、設備の不具合や家賃の不払いが発生しても対応が遅れるリスクがあります。早期に弁護士へ依頼して協議をまとめることが重要です。

【トラブル3】配偶者や親族を名義上の経営者にするケース

「名義だけ配偶者にすれば問題ない」と考える方もいますが、実態として公務員本人が経営に深く関与していると判断された場合は兼業規制違反とみなされます。資産管理会社を設立して配偶者を代表にする方法も選択肢の一つですが、設立コストや税務面での注意点があり、実行する前に必ず専門家に相談してください。

よくあるご質問

▶よくある質問:相続Q&A

不動産の相続でお悩みなら当事務所へご相談を

公務員が不動産を相続する際には、通常の相続手続きに加えて、服務規程との関係を踏まえた慎重な対応が必要です。対応が遅れると服務規程違反のリスクが生じるため、相続が発生したら早めの相談をお勧めします(本来であれば相続が発生する前の段階でご相談いただけるのが一番よいと思います)。

「相続した物件をどう扱えばいいか」「基準を超えてしまいそうで不安」「遺産分割協議がまとまらない」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひ武蔵小杉あおば法律事務所にご相談ください。相続問題に精通した弁護士が、お一人おひとりの状況に合わせた最適な解決策をご提案します。

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この記事を担当した専門家
神奈川県弁護士会所属 代表弁護士 長谷山 尚城
保有資格弁護士 FP2級 AFP 宅地建物取引士試験合格(平成25年)
専門分野相続・不動産
経歴1998年 東京大学法学部卒業
2000年 司法試験合格
2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)
2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)
2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設
2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長
2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事
2020-23年 法テラス川崎副支部長
2024-25年 法テラス神奈川副所長
2025年~ 神奈川県弁護士会副会長
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