開業医・クリニック院長の相続トラブルとは?相続・事業承継の注意点を弁護士が解説
- 2026.05.15
1.開業医・クリニック院長の相続はなぜ揉めやすいのか
開業医の先生やそのご家族から、
「クリニックを誰が継ぐかで揉めている」 「兄弟から売却を求められている」
といったご相談を多くいただきます。
本記事は、開業医の先生ご本人と、そのご家族の双方を対象にしています。先生ご本人には生前の備えとして、ご家族には相続発生後の対処の参考としてお読みください。
医師の相続は「事業承継」の問題になるため、通常の相続より圧倒的に揉めやすい構造です。
対応が遅れると、クリニック経営に支障が出るだけでなく、相続人間の関係が修復不能になる事態に発展します。
2.開業医特有の相続財産|出資持分・医療機器・不動産まで
医師の相続では、医療法人の出資持分、病院・診療所の土地・建物、高額医療機器、診療報酬請求権といった資産に加え、医院建築の借入金や医療機器のリース、従業員の退職金といった負債も一体で問題になります。
さらに、医師免許を持つ相続人しか実質的に承継できないため、特定の相続人に資産を集中させる必要が生じます。「なぜ一人だけ多くもらうのか」という対立が必ず発生する構造です。
医療資産は高額でありながら現金化しにくく、非医師には使い道がありません。このズレが紛争の火種になります。
3.【事例①】医療機器の評価額をめぐる相続トラブル
以下は、医師の相続案件において典型的に見られるトラブルのパターンを、一般的な事例として再構成したものです。特定の個人・法人を指すものではありません。
長男(医師)がクリニックを承継することになったケースで、CTなどの医療機器の評価が問題になりました。
医療機器は原則として中古市場での時価評価が基準になりますが、実際には同種の中古市場が薄く、査定額に大きな幅が出ます。
- 長男側の主張:「使用年数が長く、中古価値は低い」
- 他の相続人の主張:「まだ現役で使っている機器だ」
この対立により遺産分割が長期化し、代償金が決まらない状態が続きました。院長の生前に、評価額の根拠をあらかじめ専門家に確認しておくことが重要です。
4.【事例②】代償金不足でクリニック売却に至った事業承継の失敗
長男(医師)がクリニックを承継し、他の兄弟は会社員というケースです。非医師の相続人が「経営はできないので現金でほしい」と主張しましたが、医療資産は現金化できず、代償金を支払う資金も不足。クリニック売却の話にまで発展しました。
「誰に、どのような形でクリニックを継がせるか」を生前に明確にしておかなければ、承継者がいても廃業に追い込まれます。
5.医学部学費(特別受益)と不動産共有が生む相続トラブル
医学部学費と特別受益の問題
医学部の私立大学では6年間の学費が2,000万円を超えるケースも珍しくありません。他の兄弟との差が1,000万円単位になることもあり、相続の場面で必ず蒸し返されます。
法律上、教育費が「特別受益」に該当するかは個別判断であり、一律に控除されるわけではありません。しかし感情の問題としては解消されず、論点が「法律」から「感情」になるため、当事者間での解決が難しくなります。
不動産の問題
不動産は現金のように等分できません。共有にすると売却・建替え・担保設定のたびに全員の同意が必要になり、経営の足かせになります。
武蔵小杉・日吉などの川崎・横浜エリアでは、クリニックが立地する商業地・準住居地域の地価が高く、路線価と実勢価格の乖離が大きい傾向があります。評価方法の選択次第で相続財産の総額が数千万円単位で変わるため、評価をめぐる対立が長期化しやすいのがこのエリアの特徴です。
6.開業医に遺言書がない場合のリスク
はっきり言いますと・・・
遺言がない医師の相続は、ほぼ確実に紛争になります。
承継者・医療資産の帰属・代償金が曖昧なまま相続を迎えると、取り返しのつかない事態になります。事前の準備が、結果を大きく左右します。
7.川崎市・横浜市で開業医の相続・事業承継にお悩みの方へ
以下に当てはまる場合、早急な対応が必要です。
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クリニックの承継者を決めていない
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医療機器や不動産の評価で揉めそう
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相続人間で対立している
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遺言書を作成していない
承継が長期化・不透明になると、患者が診療継続への不安から他院へ移ってしまう「患者離れ」のリスクも現実的です。放置すると、代償金・相続税などによる数千万円単位の不利益、クリニック売却、患者離れといった重大なリスクにつながります。相続開始後では手遅れになるケースも少なくありません。
相続トラブルの予防から、相続発生後の紛争解決まで、当事務所では相続に関する初回相談(60分)は無料です。「まだ相続は先の話」と思わず、今の段階で状況を整理しておくことが最大のリスク対策です。川崎市・横浜市近郊の方はお気軽にご相談ください。

2000年 司法試験合格2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事2020-23年 法テラス川崎副支部長2024-25年 法テラス神奈川副所長2025年~ 神奈川県弁護士会副会長
























