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家族信託は遺留分の対象?裁判例に基づき弁護士が解説!

2026.06.04
家族信託と遺留分

「家族信託を設定すると、他の相続人から遺留分を請求されるのでは?」「遺留分対策として家族信託を使いたいが、本当に有効なのか?」というご相談を多くいただきます。家族信託と遺留分の関係は複雑で、法律上の決まりが明確でない部分もあるのが現状です。本コラムでは、家族信託が遺留分の対象になるかどうかを、裁判例・判決を踏まえて弁護士がわかりやすく解説します。

そもそも家族信託とは?

家族信託とは、自分の財産(不動産・預貯金・株式など)の管理や運用、処分を信頼できる家族に任せる仕組みです。財産を預ける人を「委託者」、預かって管理する人を「受託者」、財産から利益を受け取る人を「受益者」と呼びます。

たとえば、父が委託者・受益者となり、子どもを受託者として自宅や収益不動産の管理を任せるケースが代表例です。父が認知症になっても子どもが財産を適切に管理・処分できるため、近年の高齢化社会において注目を集めています。

家族信託の仕組みや手続きの詳細については、下記のページもあわせてご覧ください。

家族信託のご相談をお考えの方へ

家族信託は遺留分の対象になるのか?

家族信託が遺留分の対象になるかは状況によっても異なります

結論からいうと、家族信託が遺留分の対象になるかどうかは「一律にどちらとも言えない」というのが現状です。

税法上、家族信託の信託財産から生じる受益権は「みなし相続財産」の一種として扱われます。みなし相続財産とは、被相続人の死亡によって発生する財産のことで、死亡保険金なども同様です。

この点、死亡保険金については、最高裁平成161029日判決において「受取人固有の財産であり、原則として相続財産には属しない」と判断され、原則として遺留分の対象外とされています。しかし、同じみなし相続財産であっても、家族信託の受益権を遺留分の対象外とする明確な最高裁判例は、現時点では存在しません。

そのため、「みなし相続財産だから遺留分の対象外」と安易に判断することはできず、信託の目的や内容によって判断が分かれる可能性があります。

家族信託を遺留分の対象外とする裁判例は?

家族信託の受益権が遺留分の対象外となりうる根拠として、死亡保険金に関する最高裁判例(最高裁平成161029日判決)が参考にされることがあります。

この判例では、「死亡保険金の請求権は受取人固有の権利であり、被保険者の相続財産に属しない」と判示されています。家族信託の受益権も同じみなし相続財産として扱われることから、死亡保険金と同様に遺留分の対象外と解釈できる余地があるという考え方です。

また、学説上は「二次相続以降は遺留分が発生しない」という通説があります。一次相続(最初の相続)の段階で受益権の承継は完了しているとみなされるため、その後の二次相続では遺留分請求ができないという考え方です。

ただし、これらはあくまで解釈論であり、家族信託を遺留分の対象外と断言できる最高裁判例は現時点では存在しない点に注意が必要です。

家族信託を遺留分の対象とする裁判例は?

家族信託が遺留分の対象となりうることを示した重要な裁判例として、東京地裁平成30912日判決があります。

この判決では、「遺留分制度を潜脱する意図で信託制度を利用することは、公序良俗に違反し一部無効となる」という判断が示されました。つまり、遺留分逃れを目的として家族信託を設定し、他の相続人の権利を著しく侵害する結果をもたらすような信託契約は、一部無効とされる可能性があるということです。

なお、本件は控訴審で和解が成立しており、最高裁での最終的な司法判断は示されていません。しかし、地裁レベルでも家族信託が遺留分侵害の文脈で問題視されうることを示した点では、実務上重要な判断です。

この判決を踏まえると、遺留分回避を主たる目的とした家族信託は、今後も無効とされるリスクが残ります。家族信託はあくまで柔軟な財産管理・相続手続きの円滑化を目的とする制度であり、特定の相続人だけを著しく有利にする設計は避けるべきといえます。

家族信託と遺留分に関するよくあるトラブル

【トラブル1】全財産を家族信託にしたら他の相続人から遺留分を請求された

被相続人が保有する不動産や預貯金を全て家族信託化し、特定の子どもだけを受益者に指定したケースです。他の相続人からすれば実質的に遺産を受け取れない状態になり、遺留分侵害額請求の対象として争われるリスクがあります。全ての財産を信託化するのではなく、信託財産の範囲を慎重に設計し、他の相続人の遺留分に相当する財産は信託外に残しておくことが重要です。

【トラブル2】信託設定後に遺留分侵害額を現金で支払えなくなった

20197月施行の改正民法により遺留分の侵害額請求が認められた場合、原則として金銭での支払いが求められます。しかし、財産の大半が信託化されていると手元現金が不足し、信託財産の一部を売却せざるを得ない事態になるケースがあります。家族信託を設定する際は、万一の遺留分請求に備えて生命保険や生前贈与も組み合わせ、支払い原資を確保しておく設計が重要です。弁護士に相談して総合的な相続対策を立てることをお勧めします。

【トラブル3】家族間で信託の存在を共有せず相続発生後に紛争になった

家族信託を設定した事実を他の相続人に知らせずにいた結果、相続発生後に初めて信託の存在を知った相続人が強く反発し、訴訟に発展するケースがあります。法律上問題がない信託設計であっても、家族間のコミュニケーション不足が深刻な対立を招くことは珍しくありません。信託設定前に全ての相続人を交えた話し合いの場を設け、信託の目的・内容・受益者を丁寧に説明しておくことが、紛争予防の第一歩です。

よくあるご質問

  1. 家族信託を設定すれば遺留分を完全に回避できますか?
  2. 遺留分を完全に回避することはできません。遺留分の回避を主な目的とした家族信託は公序良俗違反として一部無効とされるリスクがあります(東京地裁平成30912日判決)。家族信託はあくまで財産管理の円滑化を目的とした制度として正しく活用することが重要です。
  3. 死亡保険金と同様に、家族信託の受益権も遺留分の対象外になりますか?
  4. 必ずしもそうとは言えません。死亡保険金については最高裁が遺留分の対象外と判断していますが、家族信託の受益権について同様の判断を示した最高裁判例はまだ存在しません。信託の設計内容や目的によって判断が異なる可能性があるため、専門家に相談して慎重に設計することをお勧めします。
  5. 二次相続では家族信託の遺留分問題は発生しないと聞きましたが本当ですか?
  6. 学説上はそのように考えられています。一次相続の段階で受益権の承継は完了するとみなされるため、二次相続では遺留分が発生しないとするのが通説です。ただし、確立した最高裁判例があるわけではないため、設計段階で弁護士に確認することをお勧めします。

相続対策で弁護士を利用するメリットとは?

家族信託と遺留分の問題は法的に複雑であり、設計段階での適切な対策が後のトラブル回避につながります。弁護士に依頼するメリットは以下の通りです。

  • 遺留分を侵害しない信託設計のアドバイス:法的リスクを踏まえ、他の相続人との公平性に配慮した信託契約の設計ができます
  • 遺言書・生命保険との組み合わせ提案:家族信託だけでなく、遺言書の作成や生命保険の活用を含めた総合的な相続対策を提案します
  • 紛争が発生した場合の対応:遺留分侵害額請求の交渉や調停・訴訟において、依頼者の利益を守るための法的サポートを行います
  • 最新の裁判例・学説を踏まえた対応:法律が明確でない領域だからこそ、最新の実務動向に精通した弁護士のサポートが重要です

相続対策でお悩みの方は当事務所へご相談を

武蔵小杉あおば法律事務所では、家族信託の設計から遺留分トラブルの解決まで、相続問題を一貫してサポートしています。「どこまで信託化すれば安全か」「遺言書との組み合わせをどうすべきか」といったご相談も、具体的な財産状況を伺いながら丁寧にアドバイスしています。

家族信託は適切に設計すれば非常に有効な相続対策ですが、設計を誤ると相続人間の紛争を招くリスクもあります。まずはお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。

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この記事を担当した専門家
神奈川県弁護士会所属 代表弁護士 長谷山 尚城
保有資格弁護士 FP2級 AFP 宅地建物取引士試験合格(平成25年)
専門分野相続・不動産
経歴1998年 東京大学法学部卒業
2000年 司法試験合格
2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)
2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)
2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設
2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長
2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事
2020-23年 法テラス川崎副支部長
2024-25年 法テラス神奈川副所長
2025年~ 神奈川県弁護士会副会長
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