共有不動産を売却することを希望していますが、他の共有者が同意しない場合、どうすればよいでしょうか?
- 2023.05.12
回答:共有物分割請求をして不動産の共有状態を解消してから売却するか、又は、自らの持分だけを売却するという方法があります。
まず、共有不動産について、他の共有者が不動産の売却に同意しない場合には、その不動産全部を売却することはできません。法律上、共有物全体を処分する場合には、共有者全員の同意が必要であり(民法251条)、不動産を売却することはこの処分行為に該当します。極端な例ですが、共有者が10名いる場合においてそのうちの1名だけが売却に反対している場合であっても、共有不動産の全部を売却することはできません。
この場合、売却を希望する共有者は、
①不動産の共有状態を解消する方法と、②自らの持分だけを売却する方法
という2つの手段を検討することになります。
まず、①の共有状態を解消する方法として、共有物の分割を行う方法があります。
具体的な方法としては、共有者のうちの特定の者が、共有物全体を買い取って他の共有者に代償金を支払うという方法(全面的価格賠償)や、不動産を分筆して、共有者それぞれが不動産を所有する状態にする方法(現物分割)、共有物を売却してその売却金を共有者の共有持分に応じて分ける方法(換価分割)などがあります。こうした共有物分割の手続は、まずは他の共有者と話合いをすることによって進めますが、共有者間での話合いがまとまらない場合には、裁判所における調停の中で話合いをすることになります。この調停では、簡易裁判所の調停委員が間に入って話し合いを進めてくれますが、それでも話合いがまとまらない場合には、共有物分割訴訟を提起して、最終的には判決によって、共有物の分割方法を裁判所に決めてもらうことができます。この手続によって、共有者は、他の共有者との共有状態を解消することができ、他の共有者が同意しなくても、自らの共有持分を処分することができます。
次に、②自らの持分だけを売却する方法もあります。共有物全体を処分するためには共有者全員の同意が必要ですが、自らの共有持分のみを処分するだけなら、他の共有者の同意は不要です。
もっとも、共有持分だけの取得希望者はなかなか見つからないことが多いですし、見つかったとしても、不動産全部を売却する場合の価格と比べて相当安い価格でしか売却できません。また、他の共有者の同意を得ずに自らの持分だけを売却すると、他の共有者とトラブルになることも多いので、自らの持分だけを売却することは慎重に検討すべきです。
2000年 司法試験合格2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事2020年~ 法テラス川崎副支部長