相続手続きに期限がありますか?いつ頃から始めればよいでしょうか?
- 2022.07.07
回答:法律上、遺産分割協議をいつまでに行わなければならないという決まりはありませんが、葬儀や行政への届け出などが一段落したところで、なるべく早く始めることをおすすめします。
もっとも、下記の通り、相続に関連していくつかの期限があるため、注意する必要があります。
①相続開始後(被相続人死亡後)3か月以内
「相続放棄」とは、被相続人の財産の承継を拒否することをいい、相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も受け取らないことになります。特に被相続人が多額の債務を残して亡くなった場合には、相続放棄を速やかに行う必要があります。
「自己のために相続があったことを知ったとき」とは、通常、被相続人が亡くなったことを知ったとき、となりますので、原則、被相続人が亡くなってから3ヶ月(熟慮期間)以内に相続放棄をするかしないかを決め、家庭裁判所で手続をする必要があります。もし、3ヶ月以内に被相続人の資産や負債を調べることができない場合には、家庭裁判所で、手続きをすることで熟慮期間を延ばすことも可能です。
したがって、相続放棄をする必要があるのかを確認するため、早めに被相続人の資産や負債を把握しておく必要があります。
②相続開始後(被相続人死亡後)4か月以内
準確定申告(被相続人の生前の所得税についての確定申告)の期限については死亡日の翌日から4か月以内にしなければならないとされています。本来、所得税の確定申告は毎年3月15日に行うことになっていますが、確定申告を行う人が亡くなった場合には、亡くなった日の翌月から4か月以内に行う必要があります。次に述べる相続税の申告期限とは別ですので、注意してください。
③相続開始後(被相続人死亡後)10か月以内
相続税については、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告する必要があります。
ここで注意するのは、申告だけではなく、10か月以内に納税までしなければならないということです。被相続人の資産状況を把握し、そもそも相続税の支払いの必要があるのかどうかを確認し、もし必要があるという場合には、ご自身の財産で相続税の支払いが可能かどうか、検討することになります。もし、自分の持っている財産のみでは相続税の納付ができないという場合には、それまでに相続人間で具体的分配方法についても協議する必要があるでしょう(相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合には、一度、仮の相続税申告をしておいた上で、後日、実際の遺産分割の内容を元に修正申告することになります)。
④相続開始後(被相続人死亡後)1年以内
この点、遺産の中に、地方の山林など、あまり価値のない財産がある場合、遺産分割がなされないまま放置されることがよくありますが、速やかに遺産分割協議をして相続登記をしておくべきです。さもないと、次の相続が発生していき、必要に迫られ相続登記をしようと考えたときには、相続人が何十人にものぼったり、連絡先も所在も分からない相続人が生じてしまうことがあったりして、手続が極めて複雑になってしまいます。
令和6年(2024年)1月から、民法と不動産登記法の改正により、これまで義務ではなかった相続登記が義務化されます。
2000年 司法試験合格2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事2020年~ 法テラス川崎副支部長