遺産に不動産がある場合の遺留分請求のポイントについて弁護士が解説
相続のご相談の中で、近年、増えているのが「遺留分」に関するトラブルです。特に、遺産の大部分が不動産で占められている場合、遺留分請求が発生しやすく、相続人同士の対立が深刻化するケースも少なくありません。
一方で現金がほとんどなく、不動産が中心の相続では、 「いくら遺留分を請求できるのか」 「不動産はどのように評価されるのか」 「現金がない場合はどうなるのか」 といった疑問が生じやすくなります。
本コラムでは、遺産に不動産が含まれている場合の遺留分請求について、基本的な考え方から実務上のポイントまで、弁護士がわかりやすく解説します。
不動産がある場合の遺留分は何が違う?
遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人に法律上保障されている「最低限の取り分」です。 遺言書や生前贈与によって、特定の相続人に多くの財産が渡っていたとしても、遺留分が侵害されている場合には、その分を請求することができます。
不動産が含まれる相続で問題になりやすいのは、次のような場合です。
• 遺産の大部分が不動産で、現金がほとんどない
• 不動産の評価額に幅があり、相続人ごとに主張が異なる
• 不動産を取得した相続人が、すぐに現金を用意できない
現在の法律では、遺留分は「不動産そのものを返してもらう」のではなく、金銭で請求する仕組みになっています(遺留分侵害額請求)。しかし、その金額は一義的に定まるものではなく、請求額の前提となる不動産の評価によって、最終的な金額が大きく変わる点には注意が必要です。
不動産がある場合の遺留分の計算方法について
遺留分侵害額は、次のような手順で計算します。
1. 相続開始時の財産価額を算定する
2. 一定期間内の生前贈与を加算する
3. 相続債務を差し引く
4. (1~3において計算した)基礎財産額 × 遺留分割合
5. すでに取得している財産額を差し引く
この中で重要なのが4.の「基礎財産額」という考え方です。
基礎財産額とは何か(※遺留分計算の前提として重要なポイント)
※ここでいう「基礎財産額」は、遺留分侵害額を計算するうえで必ず最初に確認すべき前提条件です。
遺留分の計算は、この基礎財産額をいくらと考えるかによって、結果が大きく変わるため注意が必要です。
基礎財産額とは、遺留分を計算するための元になる財産の総額のことをいいます。
基礎財産額は、次の計算式で算定されます。
基礎財産額 = 相続開始時の財産 + 一定期間内の生前贈与 - 相続債務
ここでいう「相続開始時の財産」には、預貯金や不動産、有価証券など、被相続人が亡くなった時点で所有していた財産が含まれます。
一方、「相続債務」とは、被相続人の借金や未払金、葬儀費用などをいい、これらは基礎財産額から差し引かれます。
また、遺留分制度では、生前贈与によって遺留分が形式だけのものになることを防ぐため、一定期間内に行われた生前贈与も基礎財産額に加算されます。
原則として、
• 相続人に対する生前贈与は相続開始前10年以内
• 相続人以外に対する生前贈与は相続開始前1年以内
のものが対象となります。
※不動産が含まれる相続では、この基礎財産額の中で不動産をいくらで評価するかが、遺留分の金額を左右する最大の争点になります。
不動産の評価の方法
不動産の評価方法には、主に次のようなものがあります。
路線価・固定資産税評価額
相続税の計算で用いられる評価方法です。 比較的わかりやすい評価方法ですが、実際の売買価格(時価)よりも低くなる傾向があります。
時価(実勢価格)
市場で売却した場合に想定される価格です。 遺留分侵害額請求では、原則としてこの時価を基準に考えられることが多くなります。
不動産鑑定評価
不動産鑑定士が専門的に算定する評価方法です。 裁判では重視されやすい一方で、費用や時間がかかる点には注意が必要です。
遺留分の請求において、評価方法に優劣はある?
不動産の評価方法について、どれが絶対的に正しいと決まっているわけではありません。 ただし、実務上は次のような傾向があります。
• 相続人同士の話し合い段階では、不動産会社の査定や周辺相場を参考にすることが多い
• 調停や裁判になった場合には、時価を前提とした不動産鑑定評価が重視されやすい
相手方が不動産の評価を不当に低く主張してくるケースもあり、その場合には客観的な資料に基づいて反論することが重要です。
不動産がある場合の遺留分問題を弁護士に依頼するメリット
不動産が関係する遺留分の問題は、法律の知識だけでなく、不動産評価や交渉の視点も欠かせません。 弁護士に依頼することで、
• 適切な不動産評価方法を検討・主張できる
• 不動産鑑定士など専門家と連携できる
• 相手方との交渉を任せることができる
• 調停や裁判を見据えた対応ができる
といったメリットがあります。
感情的な対立が激しくなる前に、できるだけ早い段階で専門家に相談することが、円満かつ適切な解決につながります。
遺留分に関するお悩みは当事務所にご相談ください
遺産に不動産が含まれている相続では、遺留分をめぐる問題が避けられないケースも少なくありません。請求する側・請求される側のいずれの場合でも、初動対応を誤ると、本来支払う必要のない金額まで請求されたり、逆に正当な遺留分を十分に回収できなかったりするおそれがあります。
特に、不動産の評価や基礎財産額の算定は、相続人同士で前提が食い違いやすく、感情的な対立に発展しやすいポイントです。話し合いがこじれてしまう前に、法的な観点から一度整理することが、結果的に早期解決につながります。
当事務所では、不動産を含む遺留分侵害額請求について、これまで多くの案件を取り扱ってきました。現在の状況を丁寧にお伺いしたうえで、
• 請求が法的に妥当かどうか
• 不動産の評価や基礎財産額の考え方に問題がないか
• 今後どのように進めるのが最適か
を具体的にご説明します。
「まだ請求を受けたばかりで、どう対応すべきかわからない」「この金額が本当に妥当なのか確認したい」といった段階でも構いません。 遺留分や不動産相続でお悩みの方は、問題が大きくなる前に、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

2000年 司法試験合格2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事2020-23年 法テラス川崎副支部長2024-25年 法テラス神奈川副所長2025年~ 神奈川県弁護士会副会長























