遺産分割を放置していませんか?
ご家族やご親族が亡くなり、相続を進める中で、「遺産分割が進まない」という声を多くお伺いします。例えば、下記のような理由で遺産分割が進まない、ということはありませんか?
- 相続財産の大半を不動産が占めており、代償金にあてる現預金がない
- 遺産分割協議書の作成や登記変更のための書類集めが大変である
- 被相続人と疎遠にしていたため、どこにどんな財産があるか全くわからない
- 疎遠な相続人、連絡がとれない相続人がいて話し合いが進まない
- 長男がすべてを相続するなどと主張して話が進まない
- 不動産の登記名義が以前の相続の際に変更されておらず、二次相続、三次相続が起きて相続関係が複雑になっている
- 相続する不動産が共有である
上記のような理由で、相続の手続や遺産分割が止まってしまっているという場合があるかと思います。
しかし、「遺産分割」が終わっていないと、不利益を被る可能性があります。また、その時の遺産分割をまとめず、相続手続をしなかったことで、次の相続が発生して(つまり遺産分割を放置しているあなたが亡くなったあと)から、相続トラブルの原因のひとつとなり、お子さんの代になってから親族間の縁が切れてしまうような壮絶な相続争い(いわゆる争続)に発展してしまう可能性もあります。
では、具体的にどのような不利益が発生しうるのでしょうか。
遺産分割を放置していた場合に起こりうる不利益やトラブルについて
銀行から預貯金の払い戻しを受け取ることができなくなる可能性がある
故人が亡くなると、銀行などの金融機関の預貯金口座は引き出しができなくなります。これを預貯金口座の凍結といいます。故人が遺言書を遺していない場合、預貯金口座の凍結を解除し、預貯金を全額払い戻すためには、相続人間で遺産分割について合意がとれている必要があります。逆に言えば、遺産分割が終わっていないと、たとえ相続人であっても、故人が有していた銀行の預貯金を全額払い戻すことができません。
※令和元年7月1日より、民法改正によって、遺産分割前の預貯金の一部引き出しが認められることになりました。
遺産分割の協議が完了し、相続人間で合意した事項をまとめ、相続人全員の実印が押印された「遺産分割協議書」を含めた各書類がそろっていないと、預貯金を全額引き出すことができず、相続手続が滞ってしまいます。そのため、その預貯金を利用しての葬祭費用や被相続人の最後の病院代などの支払ができなくなり、結果的に相続人全員が損を被ることになります。
遺産分割協議が長引き相続税申告が間に合わない
相続税の申告期限は、被相続人が死亡した事実を知った日の翌日から10カ月以内となっています。相続税申告が間に合わないと「加算税」「延滞税」などのペナルティーが課されます。しかし遺産分割協議で揉めることは多く、思い通りに全て分割協議が前に進むとは限りません(10ヵ月という期間を過ぎてしまった場合には、かなりの長期間(2年くらい)協議が続くことも良くあります)。
そもそも、相続税の申告のためには相続人の調査や相続財産の調査が不可欠です。
その際は、戸籍謄本を収集・調査をすることに加えて、不動産や預貯金、株式や保険等の調査をしなければなりません。遺族として葬儀や49日法要など様々なことを行った上で、相続税の申告期間というタイムリミットがある中でこれらの作業をご自身で行うことは心理的にも時間的にも御負担となるかと思われます。
遺産分割を適切かつ迅速に行うことが、法的にも税務面においても、極めて重要です。そのためにも早期に、遺産分割手続に精通した弁護士に相談をすることが重要です。相続税申告時に、配偶者控除などの税控除特例が使えなくなってしまう
相続税申告の際に、一定の要件を満たせば、「配偶者控除」「小規模宅地の特例」のような、特例を用いて相続税額を低く抑えることが可能なのですが、この特例は対象の財産を誰に相続するのか、どのように分けるかが決まっていないと(=遺産分割協議が成立していないと)適用できません。
遺産分割協議が成立していない段階では、「とりあえず法定相続分で相続したもの」と仮定して計算した額で相続税を申告し、金銭による相続税の一括納付を行わなければなりません。
この申告の際に「遺産分割協議を3年以内に終わらせる」旨を届け出ることで、遺産分割協議を行った後に、特例等を適用した正式な額を計算し直して多く収めた分は還付してもらうことができるのですが、当初の相続税申告の際に一時的に税額を負担する相続人がでてきてしまいます。この負担をする人や負担後の相続税の負担割合を相続人間で調整しようとするとこれまた手間になるでしょう(税理士に二回依頼することになる場合の税理士費用の負担も馬鹿にはできません)。
ですので、相続税申告の期限である相続発生後10カ月後までには遺産分割協議を完了しておいたほうがトラブルになるリスクを減らすことができますし、相続税申告自体もスムーズに進められます。
不動産が相続人間の共有名義になるため、売却や賃貸などが困難になってしまう
故人の名義の不動産は、死後に相続人全員の「共有」になります。遺産分割をせず「共有」のままにしておくと、不動産全体の売却や賃貸借をするにも、共有者である相続人全員から合意を得てからでないと実施できないことになります。
さらに、ずっと放置しておくと、相続人が亡くなって「数次相続」が発生し、さらに複雑な状態になってしまいます。
「数次相続」とは、最初に亡くなった人の相続が開始した後、遺産分割協議がなされないままに相続人の1人が亡くなり、次の相続が開始されてしまうことを言います(この場合、最初に亡くなった人の財産を、次に亡くなった相続人のさらに相続人が相続することになります)。
このような数次相続が起きるたびに当事者は増えていく可能性があります(例えば、父親の相続に関して、最初は子供3人が相続人でしたが、遺産分割未了のうちにそのうちの1人(長男)が亡くなると、その相続人である妻や子供2人も含めて当事者は5名となります)。数次相続が1件ではなく、数件起きることもあり、そういう状況ですと、当事者が10名を超える場合もままあります。
先ほど述べたように、実家などの不動産売却を考えたとき、共有のままですと当事者全員の同意を必要とします。数次相続が発生して、当事者が増えると、面識がない当事者がいたり、連絡が取れない当事者が出てくるなど、スムーズに話し合いが進まないことは容易に予測できるでしょう(当事務所では40名以上の相続人の合意を取り付けたこともありますが大変でした)。
そのため、遺産(特に不動産)は放置せずに当事者間で分割協議をしてきちんと名義変更をするべきですし、仮に、当事者間で協議ができないなら調停や審判を利用してでも遺産分割するべきです。
相続した不動産の登記が義務化されます
所有者不明の土地問題を解消するため、民法と不動産登記法が改正され、2024年4月1日から「相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内」に相続した不動産の名義変更をしなければならなくなりました。
この法律によって、①相続が発生し、不動産の所有権を取得したことを知ったときから3年以内に不動産の名義変更登記をすることが義務づけられました。また、②遺産分割協議によって不動産の所有権を取得する場合には、「遺産分割協議が成立した日から3年以内」に相続登記を済ませなければならなくなりました。
この相続登記の義務化は、法律の施行日(2024年4月1日)以前に相続の開始があった場合についても遡及的に適用されます。
これまでは、相続登記に関しては移転義務がなかったため、
- 不動産の価値が低い
- 相続人間で話し合いがまとまらない
- 相続人に行方不明(音信不通)の人がいる
など様々な理由で相続登記を放置していた人も多かったと思います。
しかし、今後は「正当な理由」が存在しなければ、相続により取得した不動産を3年以内に登記しなかった場合、10万円以下の過料を求められる可能性があります(上述したように、この法律は遡及されるため、例えば昭和の時代に相続が起きて、そのまま放置していたというケースでも過料を求められる可能性があります)。
この正当な理由は、下記のケースのような場合に限定的に認められています。
①数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
②遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
③申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース
④登記簿は存在しているものの、公図が現況と異なるため現地をおよそ確認することができないケース法務省|法制審議会-民法・不動産登記法部会|資料19
もし現在、亡くなられたご先祖様のままで、名義変えのないままになっている土地をお持ちの方がおられたら、早目に弁護士に相談いただくことをおすすめします。
そもそも、不動産の遺産分割協議は難航するケースも珍しくないため、定められた期間内に登記できない可能性が高いかもしれません(理屈からいえば、3年以内に法定相続分に従った内容でいったん名義変更登記をした上で、遺産分割協議が成立した後に、もう一度、遺産分割の内容にそった内容で名義変更登記をすればいいのですが、二度も登記手続きを行うのは費用面からもお勧めできません)。
この点、遺産分割協議の段階で弁護士に交渉をご依頼いただくことで、比較的短期間で解決に至る可能性が高まります。上記のような過料を避けるという意味合いももちろんありますが、それ以上にあなたの貴重な時間が奪われずに済み、またご家族・ご親族間の関係性も悪化させずに済むことが多いため、ぜひ、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。
遺産分割が進まない状況を解決するためには
ここまでの話で、遺産分割を放置しておくと、様々な不利益やトラブルが起きることはご理解頂けたと思います。したがって、遺産分割は放置せず早めに進めるべきです。
では、どうしていけばよいのでしょうか。
遺産分割が進まない状況を解決するためには、まずは相続に詳しい弁護士にご相談の上、どのような方針で進めていくのかを決定していくべきでしょう。
故人の死後、相続人が誰なのか、または相続財産が全部でどのくらいあるのか、全く把握されていないで放置している場合は、まず相続人の調査と相続財産の調査を弁護士に依頼しましょう。調査の結果、話し合いがうまくいかない可能性が高ければ、弁護士に遺産分割の交渉の代理を依頼することになります。一方で、話し合い自体はそれほど問題なく進められる場合であっても、弁護士が間に入ることによって、遺産分割協議書の作成および相続人への押印依頼を実施することによって、早急に遺産分割協議書を作成し、登記の移転ができることも多いです。
故人の死後、例えば
「他の相続人と疎遠で、連絡を取るのが面倒である」「相続人が遠方に散らばってしまい、連絡が難しい」など、相続人との連絡が取れない場合や、
「遺産分割協議書案を作ってもらったが、他の相続人が納得せず、押印してもらえない」「以前の相続の際に不動産の名義変更がなされていないため、相続関係が複雑になっている」など遺産分割協議自体が滞ってしまっている場合は、
弁護士があなたに代わって遺産分割協議の交渉の代理を実施、場合によっては遺産分割調停を申し立てて解決を目指します。
あなたがお考えの遺産分割の内容で、ご希望になるべく添える形での解決を目指します。まずは、当事務所の弁護士にお気軽にご相談ください。
遺産分割は早めに弁護士にご相談を
- 相続財産の大半を不動産が占めており、代償金にあてる現預金がない
- 遺産分割協議書の作成や登記変更のための書類集めが大変である
- 被相続人と疎遠にしていたため、どこにどんな財産があるか全くわからない
- 疎遠な相続人、連絡がとれない相続人がいて話し合いが進まない
- 長男がすべてを相続するなどと主張して話が進まない
- 不動産の登記名義が以前の相続の際に変更されておらず、二次相続、三次相続が起きて相続関係が複雑になっている
- 相続する不動産が共有である
こういったことでお悩みの方は、まずは弁護士に相続の相談をしていただくことをおすすめいたします。
相続問題の解決実績が豊富な弁護士が長期間放置していた相続の問題を解決に導くサポートをさせていただきます。
当事務所では相続に関する初回相談は60分無料ですので、お気軽にご相談ください。
2000年 司法試験合格2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事2020年~ 法テラス川崎副支部長