生前贈与は相続税対策になる?2024年改正の注意点と「3つの対処法」を川崎・武蔵小杉の弁護士兼税理士が解説!
- 2026.08.28

「生前贈与をしておけば、うちの相続税は減らせますよね?」――川崎市や武蔵小杉周辺にお住まいの方から、非常によく寄せられるご相談です。
結論から申し上げると、2024年の税制改正により、「とりあえず毎年110万円ずつ贈与しておけば安心」という従来のやり方だけでは、十分な節税効果が得られないケースが増えました。しかし、新しいルールを正しく理解し、今すぐ計画的に始めれば、生前贈与は今なお強力な相続対策になります。鍵を握るのは、次の3つの対処法です。
1日でも早く贈与をスタートする(持ち戻し期間が3年から7年に延びるため)
相続時精算課税制度を賢く活用する(2024年改正で使い勝手が向上)
孫や子の配偶者への贈与を組み合わせる(原則、持ち戻しの対象外)
「良かれと思って生前贈与をしていたのに、税務署から否認された」「節税にはなったが、兄弟間で遺産争いが起きてしまった」という事態を防ぐには、税務と法律、両方の視点が欠かせません。とはいえ、いつ・どのように贈与するかを誤ると、せっかくの対策が無駄になったり、かえって争いの火種になったりします。本コラムでは、弁護士兼税理士の立場から、2024年改正の要点と、トラブルを防ぐための具体的なポイントをわかりやすく解説します。
1.そもそも生前贈与とは?相続対策としての2つの方法
生前贈与とは、ご自身が生きているうちに、財産を子どもや孫などにあらかじめ譲っておくことです。将来の相続財産を前もって減らしておくことで、相続税の負担を軽くする効果が期待できるため、古くから代表的な相続対策として活用されてきました。贈与には大きく分けて2つの制度があります。
① 暦年贈与
年間110万円までの贈与であれば贈与税がかからない「暦年課税制度」を使った贈与を、一般的に「暦年贈与」と呼びます。毎年少しずつ贈与を重ねることで、将来の相続財産を計画的に圧縮できる点が最大のメリットで、川崎周辺の地主の方や中小企業の経営者の方にも古くから活用されてきました。ただし、後述する「生前贈与加算」の対象となるため、贈与のタイミング次第では相続財産に持ち戻されてしまう点に注意が必要です。
② 相続時精算課税制度
原則60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与について選択できる制度です。累計2,500万円までの特別控除に加え、2024年の税制改正で年110万円の基礎控除が新設され、以前よりも使い勝手の良い制度に生まれ変わりました。この基礎控除の範囲内であれば贈与税の申告は不要となり、生前贈与加算の対象にもなりません(詳しくは次章で解説します)。一方で、いったん本制度を選択すると、同じ贈与者からの贈与について暦年課税に戻すことはできない点には注意が必要です。
2.要注意!「持ち戻し期間」が3年から7年に延長。その3つの対処法
2024年の税制改正における最大の注意点は、暦年贈与の「生前贈与加算(持ち戻し)」の期間が、相続開始前「3年以内」から「7年以内」へと延長されたことです。生前贈与加算とは、亡くなる直前に慌てて駆け込み贈与をして相続税の負担を不当に逃れることを防ぐためのルールです。対象期間内に行われた贈与は「なかったこと」として相続財産に加算されてしまいます。
この改正は2024年1月1日以降の贈与から適用されますが、いきなり7年分さかのぼるわけではなく、以下のように段階的に延長される仕組みになっています。
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相続開始のタイミング |
持ち戻しの対象期間 |
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〜2026年12月31日 |
相続開始前3年間 |
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2027年1月1日〜2030年12月31日 |
2024年1月1日〜相続開始日 |
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2031年1月1日〜 |
相続開始前7年間(完全移行) |
この表のとおり、2026年12月31日までに相続が開始する場合は、これまでどおり「相続開始前3年間」がそのまま適用されます。7年ルールへの移行が始まるのは2027年からで、完全に7年となるのは2031年1月1日以降です。また、相続開始前4〜7年以内(3年超7年以内)の贈与については、その期間中の贈与額から総額100万円を差し引いた金額を持ち戻す、という緩和措置も設けられています。
では、どう対処すればよいのでしょうか。有効な方法は次の3つです。
対処法1:とにかく早く始める
お元気なうちから1日でも早く贈与を始めれば、贈与から相続開始までの経過年数が長くなり、持ち戻し対象から外れる可能性が高まります。ただし、これは「今年(2026年)中に始めないと損」という意味ではありません。持ち戻しの対象になるかどうかは、贈与をした年ではなく、実際に相続がいつ発生するかによって決まるためです。
例えば、2026年に贈与をしても、その後2027〜2030年の間に相続が発生した場合、その期間の持ち戻しルールは「2024年1月1日〜相続開始日」となるため、2026年の贈与はそのまま持ち戻しの対象に含まれてしまいます。反対に、2027年に贈与を始めても、その後長く生きられて贈与から一定期間(現行は3年、将来的には7年)が経過してから相続が発生すれば、持ち戻し対象から外れます。つまり、2026年という年そのものに特別な締め切りがあるわけではありません。
とはいえ、相続がいつ発生するかは誰にも分かりません。だからこそ「早く始めれば始めるほど、贈与が持ち戻し対象から外れる可能性は高まる」という点に変わりはなく、先送りにする理由にはなりません。「まだ早いかもしれない」と迷っている間も、年間110万円の非課税枠を使わずに過ごしてしまうことになるため、お元気なうちから計画的に贈与を始めることが、最も確実な対策です。
対処法2:相続時精算課税制度を活用する
新設された年110万円の基礎控除の範囲内で贈与すれば、暦年贈与の持ち戻しルールを気にせず贈与できます。有力な選択肢の一つです。
対処法3:孫や子の配偶者に贈与する
持ち戻しの対象になるのは、原則として相続・遺贈によって財産を取得する人(法定相続人・受遺者)だけです。代襲相続人にならないお孫さんや、お子様の配偶者への贈与は、原則として7年ルールの対象外となります。ただし、遺言でこれらの人に財産を遺贈したり、生命保険金の受取人に指定したりすると、加算対象になってしまう点には注意が必要です。
3.税金が減っても揉めたら意味がない!生前贈与の法律トラブルに注意
税理士として「税金を減らす」アドバイスをする一方で、弁護士として数多くの相続トラブル(争族)にも向き合ってきました。「税金対策」ばかりに気を取られると、思わぬ「法律トラブル」を引き起こすことがあります。以下の点には特にご注意ください。
①「特別受益」による兄弟間のトラブル
特定の相続人にまとまった生前贈与を行うと、その贈与は「特別受益」として扱われ、遺産分割の際に他の相続人との公平を図るために持ち戻して計算されることがあります。相続税の生前贈与加算とは別の民法上の制度であり、相続人間の遺産分割協議でトラブルの火種になりやすいポイントです。
【よくあるトラブル例】
長男の住宅購入資金として1,000万円を生前贈与したものの、贈与の存在を他の兄弟に伝えていなかったケース。相続開始後、次男・三男が「知らなかった」「不公平だ」と主張し、長男の取得分から1,000万円を差し引いて遺産分割をすべきだと争いになる可能性がありますが、こうなると協議は長期化しがちです。贈与の時点で他の相続人にも状況を共有し、必要に応じて贈与の趣旨や取り扱いを書面に残しておくことが、こうした争いを未然に防ぐポイントになります。
②「遺留分」の侵害
生前贈与は、遺留分(一定の相続人に保障された最低限の取り分)を算定する際の基礎財産にも算入されることがあります。特定の相続人や第三者に偏った贈与を続けると、他の相続人から遺留分侵害額請求を受けるおそれがあります。相続税対策のつもりで行った贈与が、かえって相続人間の争いを引き起こしてしまっては本末転倒です。
生前贈与と遺産分割・遺留分のトラブルを防ぐには、贈与の段階から遺言まで見据えた設計が有効です。例えば、被相続人の意思表示によって、遺産分割における相続分の計算からその贈与を除外する「持戻し免除の意思表示」(民法903条3項)を、贈与契約書や遺言に明記しておく方法があります。ただし、この意思表示があっても、遺留分の算定においては、原則として相続開始前10年以内の贈与は基礎財産に算入されるため(民法1044条1項・3項)、遺留分侵害額請求そのものを防げるわけではない点には注意が必要です。「相続分の計算」と「遺留分の計算」は別のルールで動いているため、贈与の設計段階でこの違いを踏まえておくことが、税務と法務の両方に精通した専門家に相談する意義といえます。
③税務署に否認される「名義預金」
子や孫の名義の口座にお金を移しているだけで、実際の管理・支配は贈与者本人が続けているようなケースは「名義預金」とみなされ、贈与そのものが成立していないと判断されるおそれがあります。この場合、相続税の税務調査で指摘を受け、当該財産は相続財産として課税されてしまいます。
【よくあるトラブル例】
祖父が孫名義の口座を開設し、毎年コツコツと贈与のつもりで入金を続けていたものの、通帳や印鑑は祖父自身が管理し、孫はその口座の存在すら知らなかったというケース。この場合、税務署からは「贈与が成立しておらず、実質的には祖父の財産である」と判断され、相続財産に加算された上で、相続税申告をした・しないに関わらず追徴課税を受けるおそれがあります。贈与を行う際は、口座の管理を受贈者本人に任せ、受贈者自身がその存在と金額を把握していることが、名義預金と疑われないための最低限の条件です。
④贈与契約書は必ず作成する
贈与のたびに贈与契約書を作成し、通帳や振込記録などで資金の流れを残しておくことが重要です。記録が残っていないと、税務調査の際に「本当に贈与があったのか」「使途不明金ではないか」といった疑いをかけられ、思わぬ追徴課税につながることがあります。
4.遺言とあわせた「ワンストップ対応」のメリット
生前贈与は、あくまで相続対策の一部にすぎません。贈与しきれなかった財産をどのように分けるか、遺留分に配慮した遺産分割をどう設計するかといった点は、遺言によってあらかじめ手当てしておく必要があります。前章で触れた「持戻し免除の意思表示」も、贈与契約書だけでなく遺言の付言事項に明記しておくことで、相続人間の認識のズレを防ぐ効果が高まります。生前贈与の税金計算は税理士へ、遺言書の作成は弁護士へ……と別々の専門家に依頼してしまうと、対策の内容に矛盾が生じたり、こうした特別受益・遺留分の扱いについて認識のズレが生まれたりするリスクがあります。税務と法務を一体で設計できる専門家に相談することが、確実で安心な相続対策への近道です。
よくあるご質問
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生前贈与加算の対象になるのはどんな人ですか?
- 相続や遺贈によって財産を取得する人(法定相続人・受遺者)、生命保険金や死亡退職金などのみなし相続財産を取得する人が対象です。相続放棄をした人や、財産を何も受け取らない孫・子の配偶者などは対象になりません。
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相続時精算課税制度を選べば生前贈与加算を避けられますか?
- 年110万円の基礎控除の範囲内であれば、生前贈与加算の対象にはなりません。ただし、いったん相続時精算課税制度を選択すると、同じ贈与者からの贈与について暦年課税に戻すことはできないため、慎重な判断が必要です。
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今すぐ贈与を始めた方がいいのでしょうか?
- 持ち戻し期間の延長は段階的に進んでおり、贈与から時間が経つほど加算対象から外れやすくなります。早く始めるほど有利になるケースが多いため、財産状況やご家族の事情に応じて早めに専門家へご相談いただくことをおすすめします。
川崎・武蔵小杉で相続にお悩みなら、弁護士・税理士のいる当事務所へ
相続対策は、「税金をいくら減らせるか(税務)」と「家族の争いをどう防ぐか(法務)」の両輪で考える必要があります。
当事務所代表の長谷山尚城は、2002年10月に弁護士登録して以来、川崎・武蔵小杉エリアを中心に相続案件に取り組み、これまで累計800件を超える相続のご相談をお受けしてきました。神奈川県弁護士会副会長(2025年度)も務め、相続税実務にも長年携わってきた経験を活かし、2026年6月には税理士登録も行っております。「弁護士兼税理士」として、法律トラブルの予防から相続税対策まで一体でご提案できる体制を整えています。
当事務所は川崎市中原区・武蔵小杉に拠点を構え、弁護士7名・事務職8名の体制で、地域の皆様の相続・生前対策をサポートしてまいりました。
特に、以下のようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度当事務所の無料相談をご利用ください。
生前贈与をした方がよいのか、そもそも迷っている
暦年贈与と相続時精算課税、どちらが自分の家族に合っているか判断できない
特定の子や孫にまとまった資金を渡したいが、他の相続人との公平性が心配
過去に行った贈与が、名義預金と疑われないか不安
生前贈与とあわせて、遺言書の作成も検討したい
【初回無料相談のご案内】
お電話でのご予約・ご相談:044-789-5441(受付時間:平日9:30~17:30)
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宅地建物取引士試験合格(平成25年)
2000年 司法試験合格2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事2020-23年 法テラス川崎副支部長2024-25年 法テラス神奈川副所長2025年度 神奈川県弁護士会副会長























