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成年後見制度が大きく変わる!2026年成立の改正民法のポイントを弁護士が解説

2026.07.27
成年後見制度が大きく変わる!2026年成立の改正民法のポイントを弁護士が解説

目次

  1. 【結論】2026年6月成立の法改正で何がどう変わるのか
  2. そもそも現行の成年後見制度とは?(後見・保佐・補助の3類型).
  3. 現行の成年後見制度が「使いにくい」と言われてきた理由
  4. 2026年成年後見制度改正の4つのポイント
  5. 改正法はいつから始まる?(施行時期と経過措置)
  6. 施行を待つべきケース・今すぐ動くべきケース
  7. 成年後見の申立てを弁護士に依頼するメリットとは?
  8. 成年後見制度の改正に関するよくあるご質問
  9. 川崎・武蔵小杉で相続・成年後見のお悩みなら当事務所へご相談ください
  10. 0. はじめに

「親が認知症になったら、実家の売却や銀行口座の解約ができなくなるのではないか」「成年後見制度は一度始めると一生やめられないと聞いて、利用するのが不安だ」

川崎市や武蔵小杉周辺にお住まいの方からも、このような相続や生前対策に関するご相談を数多くいただきます。

こうした成年後見制度の「使いにくさ」を解消するための民法改正が、20266月に成立しました。これまで指摘されてきた課題の多くが、今回の改正によって見直されることになります。本コラムでは、2026年に成立した成年後見制度の改正内容と気になる施行時期、そして「今どのように動けばよいのか」について、相続を専門的に取り扱う弁護士の視点から、専門用語をできるだけ噛み砕いて解説します。

1. 【結論】20266月成立の法改正で何がどう変わるのか

まずは、多くの方が知りたい「結局、何が変わるのか」という結論からお伝えします。

今回の法改正を一言で表すと、「一度始めたら一生やめられず、本人の自由を縛りがちだった制度」から、「必要なときに、必要な範囲だけ利用できる、より柔軟な制度」への見直しです。

これまで多くのご家族を悩ませていた、「実家を売却するためだけに成年後見人を付けたら、売却が終わってもずっと専門職への報酬を支払い続けなければならなくなった」という問題についても、改善が見込まれます。

ただし、この新しい仕組みが実際に使えるようになるのは、早くても2027年後半以降の見込みです(施行時期の詳細は5章をご覧ください)。今まさに口座凍結や遺産分割でお困りの場合は、新制度の施行を待たず、現行制度での対応をご検討ください(6章で詳しく解説します)。

改正法成立の背景

2026年(令和8年)617日、参議院本会議において「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)と、これに伴う関係法律の整備法(令和8年法律第46号)が可決・成立し、同月24日に公布されました。

高齢化の進展や単身高齢者の増加といった社会状況の変化を踏まえ、成年後見制度と遺言制度を「更に使いやすくする」ことを目的とした見直しです。本コラムでは、日々の暮らしや相続対策への影響が特に大きい「成年後見制度の改正」に絞って解説します。

2. そもそも現行の成年後見制度とは?(後見・保佐・補助の3類型)

改正点を見る前に、これまでの制度を簡単におさらいします。

成年後見制度とは、認知症や知的障害・精神障害などによって判断能力が不十分になった方を、家庭裁判所が選んだ支援者(後見人等)が法律面・財産管理の面から支える仕組みです。現行の制度では、本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3類型に分かれています。

類型

本人の判断能力の状態

支援者の権限

後見(こうけん)

判断能力を欠く常況(最も重い状態)

後見人が本人の財産に関する包括的な代理権・取消権を持つ

保佐(ほさ)

判断能力が著しく不十分(中程度の状態)

保佐人が、法定の重要な財産行為について同意権・取消権を持つ

補助(ほじょ)

判断能力が不十分(軽度の状態)

補助人が、本人が希望する特定の行為について代理権・同意権を持つ

 

最高裁判所事務総局家庭局の統計によると、令和712月末時点の利用者数は、後見が18828人、保佐が58162人、補助が18078人となっており、現行制度では利用者の多くが「後見」類型に集中していることが分かります。

3. 現行の成年後見制度が「使いにくい」と言われてきた理由

制度が2000年に導入されてから四半世紀余りが経過し、実務の現場では主に次の3点が課題として指摘されてきました。

・事実上の終身制:遺産分割や不動産売却など、利用のきっかけとなった事務が終わっても、本人の判断能力が回復しない限り制度の利用をやめることができない

・自己決定の制限:判断能力を欠く常況にあると認定されると、後見人が包括的な代理権・取消権を持つ制度しか利用できず、本人の意思決定の余地が必要以上に制限される

・専門職への報酬が生涯続く:親族以外の専門職が後見人に選ばれた場合、本人が亡くなるまで報酬が発生し続ける。事務自体は短期間で終わっても、その後長期間にわたり報酬の負担が続くケースがある

こうした「一度始めたら後戻りできない」という点が、制度の利用をためらわせる一因になっていました。今回の改正は、これらの課題に対応するものです。

4. 2026年成年後見制度改正の4つのポイント

押さえておくべきポイントは、次の4つです。

制度を「補助」へ一本化

今回の改正の中心は、後見・保佐の制度を廃止し、「補助」の制度に一元化することです。本人に必要な事項についてのみ代理権・取消権を付与する仕組みとなり、自己決定を必要以上に制限しない設計になります。

判断能力を欠く常況にある方についても、保護に空白が生じないよう、法定の重要な財産行為をまとめて取り消せる「特定補助の仕組み」を選択して利用することが可能です。この仕組みを利用する際は、医師2名以上の意見を聴取したうえで、明らかに必要がないときは鑑定が不要とされています。

終身制の見直し(途中で終了できる仕組み)

これまでは本人の判断能力が回復しない限り制度をやめることができませんでしたが、改正後は、判断能力が十分に回復していない場合であっても、制度利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めるときは、申立てまたは職権により、途中で制度利用を終了できるようになります。補助人には年1回、家庭裁判所へ本人の状況を報告する義務があり、その機会などを通じて判断されることが想定されています。

遺産分割・不動産売却など目的別のスポット利用

本人の判断能力が不十分であること、本人の同意、制度利用の必要性を要件として、遺産分割協議への参加や不動産売却など、特定の行為に限定して補助人に代理権を付与する審判を受けることが可能になります。

あわせて、補助人の死後事務の権限も拡充され、本人死亡後の火葬・埋葬に関する契約の締結や、施設利用料など相続財産の保存に必要な支払いといった事務も行えるようになります。

後見人(補助人)の交代がしやすくなる

補助人の選任時に考慮すべき要素の冒頭に「本人の意見」が明記され、本人の意向がより重視されるようになります。また、解任事由に「本人の利益のために特に必要があるとき」が追加され、横領などの不正行為がなくても、本人と面談を行わないといった事情があれば交代が可能になります。

報酬面でも、家庭裁判所が報酬を決定する際に補助人が行った事務の内容等を考慮要素とすることが規定上明確化され、報酬請求が認容された事案の実績公表も予定されており、報酬の予測可能性が高まる見込みです。

5. 改正法はいつから始まる?(施行時期と経過措置)

成年後見制度の見直しに関する改正は、公布日(2026624日)から起算して26か月を超えない範囲内で政令が定める日に施行されます。遅くとも20281224日までには施行されますが、家庭裁判所など関係機関のシステム改修・運用ルールの整備が必要なため、実務上は2027年後半から2028年ごろに新制度が使えるようになる可能性があります。

なお、同時に改正された遺言制度のうち、押印の任意化等は公布日から1年以内(2027624日まで)、システム改修を要する「保管証書遺言」の創設等は公布日から3年以内(2029624日まで)に、それぞれ別途施行される予定です。

すでに制度を利用している方はどうなるか

施行日より前から後見・保佐を利用している場合、自動的に新制度へ切り替わるわけではなく、基本的にはそのまま現行の内容で利用を継続できます。新しい補助制度へ移行したい場合は、改めて家庭裁判所へ申立てを行う必要があり、その場合は現在利用中の後見・保佐開始の審判は取り消されます。なお、解任事由や本人の意向を把握する義務については、施行後は現在利用中の方にも改正後の民法が適用されます。

6. 施行を待つべきケース・今すぐ動くべきケース

改正法の施行はまだ先ですが、ご家族の状況によっては「待つ」ことがかえって負担になる場合があります。

今すぐ動くべきケース

・すでに認知症が進行しており、口座凍結や不動産売却、遺産分割協議への対応が急務になっている

・相続手続きの中で、判断能力が不十分な相続人がいるために遺産分割協議が進められない

このような場合、施行(早くて2027年後半〜2028年ごろ)を待っていると、生活資金の確保や相続手続きが進まない状態が続いてしまいます。現行の成年後見制度(後見・保佐・補助)で申立てを進める必要があります。

施行を待つ、あるいは他の制度と組み合わせて検討すべきケース

・本人の判断能力にまだ大きな問題がなく、将来に備えた生前対策の段階にある

・不動産の売却や資産の組み替えなど、家族の判断で柔軟に財産を動かしたい

こうしたケースでは、新制度であっても行為限定の場合は年1回の家庭裁判所への報告義務が残るため、より自由度の高い財産管理を希望される場合は、家族信託と任意後見契約を組み合わせる方法も引き続き有力な選択肢になります。武蔵小杉・川崎エリアでは、実家の売却や収益物件の管理を見据えて、早い段階から家族信託をご検討されるご家庭も増えています。

7. 成年後見の申立てを弁護士に依頼するメリットとは?

今回の改正により、「補助」への一本化やスポット利用、特定補助の仕組みなど、制度の選択肢は増えることになります。ご本人の状況に照らして、どの範囲の代理権を求める審判を申し立てるべきか、経過措置のもとで現行制度を維持すべきか新制度へ移行すべきかといった判断には、専門的な知識が必要です。

弁護士に依頼することで、ご本人・ご家族の状況を丁寧にヒアリングしたうえで、申立書類の作成から家庭裁判所とのやり取りまで一貫してサポートを受けられます。特に遺産分割協議のために補助制度を利用する場合など、相続手続き全体を見据えた進め方の提案を受けられる点は、相続に精通した弁護士に依頼するメリットの一つです。

8. 成年後見制度の改正に関するよくあるご質問

Q1. 今すぐ後見人が必要な状態ですが、新制度の施行まで待つ必要がありますか?

  1. 待つ必要はありません。新制度が実際に動くのは早くても2027年後半以降の見込みです。現在すでに口座凍結や遺産分割でお困りの場合は、現行の「後見・保佐・補助」のいずれかで速やかに申立てを行うことをお勧めします。

Q2. すでに後見制度を利用していますが、法改正されたら自動的に新制度に切り替わりますか?

  1. 自動的には切り替わりません。経過措置により、現在利用中の制度がそのまま継続します。新しい補助制度へ切り替えたい場合は、施行後に改めて家庭裁判所へ申し立てる必要があります。

Q3. 「補助」に一元化されると、重い認知症の方の保護が手薄になりませんか?

  1. 判断能力を欠く常況にある方については、「特定補助の仕組み」により、従来の後見に近い保護(法定の重要な財産行為をまとめて取り消せる仕組み)を選択して利用することができます。

Q4. 成年後見制度(新制度含む)と家族信託はどちらを選ぶべきですか?

  1. 目的によって異なります。判断能力低下「後」の身上監護も含めた公的な保護が必要な場合は成年後見(補助)が、判断能力があるうちから柔軟に不動産の売却や資産承継を進めたい場合は家族信託が向いています。両制度を併用する方法も有効です。制度選択に迷う場合は、専門家へご相談ください。

9. 川崎・武蔵小杉で相続・成年後見のお悩みなら当事務所へご相談ください

2026年の改正により成年後見制度は使いやすくなる見込みですが、その一方で「特定補助の設計」「どの範囲の代理権を申し立てるべきか」「家族信託とどちらを選ぶべきか」など、選択肢が増えた分、ご自身だけで判断することが難しい場面も増えると考えられます。

武蔵小杉あおば法律事務所は、東急東横線・目黒線・JR南武線・横須賀線が乗り入れる武蔵小杉の地で、相続・生前対策・成年後見のご相談に取り組んでまいりました。弁護士7名・事務職8名の体制で、これまでに800件以上の相続・生前対策のご相談に対応しております。

また、代表弁護士は税理士登録も行っており、事務所内で法律と税務の双方の知見をもってご相談をお受けできる点が特徴です。「成年後見人を付けた場合、将来の相続税対策はどうなるか」「実家を売却したときの税金はどうなるか」といった、法律と税金がまたがる問題についても、あわせてご相談いただけます。

「まだ親の認知症は軽度だが、今からできることを知りたい」「銀行口座が止まってしまい対応に困っている」など、どのような段階のご相談でも構いません。初回のご相談から、無理のない対応方針を一緒に整理いたします。

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この記事を担当した専門家
神奈川県弁護士会所属 代表弁護士 長谷山 尚城
保有資格弁護士 FP2級 AFP 宅地建物取引士試験合格(平成25年)
専門分野相続・不動産
経歴1998年 東京大学法学部卒業
2000年 司法試験合格
2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)
2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)
2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設
2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長
2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事
2020-23年 法テラス川崎副支部長
2024-25年 法テラス神奈川副所長
2025年~ 神奈川県弁護士会副会長
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