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遺言執行者が動かない・手続きを進めてくれないときの対処法を武蔵小杉の弁護士兼税理士が解説!

2026.08.11
遺言執行 対処負

「亡くなった父の遺言書で遺言執行者に指定された人が、何ヶ月経っても連絡をくれない」「財産目録すら届かず、預貯金の解約も進まないまま放置されている」——川崎市中原区・武蔵小杉駅周辺にお住まいの方から、このような切実なご相談を数多くいただきます。相続財産が凍結されたまま時間だけが過ぎていくと、不安や苛立ちが募る一方でしょう。

まず、今まさに困っているあなたに結論からお伝えします。

結論:動かない遺言執行者への対処は、この2ステップです

① 内容証明郵便で「速やかに手続きを進めてください」と期限を切って催告(督促)する
② それでも動かなければ、家庭裁判所に遺言執行者の「解任」を申し立てる

※財産が勝手に使い込まれたり目減りしたりする心配がある場合は、とあわせて「職務執行停止」の保全処分(緊急のストップ措置)を申し立てることで、審判が確定するまでの間の財産流出を防げます。まずはの催告から着手し、進まなければへ進む

この順番さえ押さえておけば、慌てず対応できます。

「そのうち動いてくれるだろう」と放置してしまうと、思わぬ大きな不利益を被ることがあります。本コラムでは、遺言執行者が手続きを進めてくれない場合にとるべき対処法と、解任請求の流れについて弁護士兼税理士が解説します。

1. 遺言執行者とは?その職務と権限を弁護士兼税理士が解説

そもそも、遺言執行者は何をしなければならない人なのでしょうか。遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権限を持つ人のことです。相続人の代理人としてではなく、独立した立場で手続きを進める点が特徴です。遺言執行者に就任すると、主に以下のような職務を負います。

・就任通知:就任を承諾したら直ちに任務を開始し、遅滞なく相続人全員に遺言の内容を通知する義務があります(民法1007条)

・財産目録相続財産の目録を作成し、相続人に交付しなければなりません(民法1011条)

・預貯金の解約・払戻し:金融機関での相続手続きを単独で進める権限がありますの作成・交付:遅滞なく

・不動産の名義変更:『相続させる』旨の遺言(特定財産承継遺言=「長男に自宅を相続させる」のように特定の財産を特定の人に渡す遺言のことです)による不動産の相続登記は、遺言執行者が単独で申請できます(民法1014条2項)。なお、第三者等への『遺贈』の場合は受遺者との共同申請となりますが、遺言執行者がいれば他の相続人全員の関与や実印は不要となり、スムーズに手続きを進められます

・完了報告:すべての職務を終えたら、相続人に経過と結果を報告します

これらの職務は「遅滞なく」「直ちに」行うことが法律上求められています。裏を返せば、正当な理由なく長期間放置している状態は、後述する「任務懈怠」にあたる可能性が高いということです。

2. 遺言執行者が手続きを進めないと、相続人・受遺者にどんな不利益が生じるのか?弁護士兼税理士が解説!

遺言執行者が動かないことで、相続人や財産を受け取る方(受遺者)には次のような具体的なリスクが押し寄せます。

・預貯金が凍結されたままで生活費や葬儀費用に困る
故人名義の口座は凍結されたままとなるため、葬儀費用の支払いや残されたご家族の当面の生活費を引き出すことができず、相続人の方の立替金がかさんでいきます。

・不動産の名義変更ができず、売却や活用の予定が立てられない
実家を売却して納税資金に充てたい、あるいはリフォームして活用したいと考えていても、名義変更が進まなければ一切の手続きがストップします。

・相続税の「10か月期限」を過ぎ、余分な税負担が生じる
相続税の申告・納付期限は「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」です。遺言執行者が財産目録を作らないせいで遺産の全体像が分からないと、期限に遅れてしまい、「無申告加算税」や「延滞税」といった余分な税負担が生じます。さらに、小規模宅地等の特例など、本来使えたはずの節税制度が使えなくなるおそれもあります。

・財産の使い込み・目減りのリスク
その間に遺言執行者が財産を勝手に使い込んだり、適切な管理がなされないまま株価変動などで財産が目減りしたりするリスクがあります。

特に相続税申告には厳格な期限があるため、「そのうち進むだろう」と様子見を続けることは非常に危険です。一定期間手続きが止まっている場合は、早めに次の一手を検討する必要があります。

3. 遺言執行者を解任できるケースとは?

遺言執行者は、相続人の一存で自由に解任できるわけではありません。民法は次のように定めています。

遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる(民法10191項)

この「任務を怠ったとき」(=任務懈怠。やるべきことをやっていない状態のことです)「正当な事由があるとき」に該当する具体例としては、主に次のようなケースが挙げられます。

・【任務懈怠】財産調査や目録の作成を行わない、預貯金の解約や名義変更にまったく着手しない、相続人からの問い合わせに応じず進捗を報告しない

・【一部の相続人への加担】遺言の内容を無視して特定の相続人に有利な対応をする、他の相続人に情報を開示しない

・【財産の使い込み】管理を任された相続財産を不正に使用・費消している

・【その他正当な事由】長期の疾病や行方不明、遠方への転居などにより任務の継続が事実上困難になっている

一方で、「遺言執行者の性格や態度が気に入らない」「報酬を支払いたくない」「自分に不利な内容の遺言だから」といった理由だけでは、解任は認められません。解任を申し立てる際は、客観的な事実に基づいて「正当な事由」を具体的に示すことが重要です。

実際に、遺言執行者が相続人から預貯金等の管理状況について報告を求められたにもかかわらず説明をせず、かつ一方の相続人(後妻側)の利益にのみ偏った対応をしていたとして、任務懈怠および解任事由が認められ、原審の解任判断が維持された裁判例もあります(東京高裁平成191023日決定・判例タイムズ129178頁)。「報告してほしい」という相続人側の求めを放置し続けたことが、決め手のひとつになっています。

4. 遺言執行者の解任手続きの流れについて

遺言執行者の解任は、次のようなステップで進めます。

① 内容証明による催告

まずは書面で任務の履行を催告し、「相当期間手続きが進んでいない」という事実を証拠として残します

② 家庭裁判所への解任申立て

それでも改善が見られない場合、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「遺言執行者解任の審判」を申し立てます。例えば、亡くなられた方が川崎市中原区・高津区・幸区などにお住まいだった場合は、横浜家庭裁判所川崎支部(川崎市川崎区)が管轄となります。申立ては相続人や受遺者などの利害関係人が行うことができ、代表者1名からでも可能です(申立費用は収入印紙800円のほか、郵便切手代がかかります)

③ 職務執行停止の審判
(保全処分=審判が確定するまでの間、遺言執行者の職務を一時的に止めるなどして財産を守るための緊急措置です)

解任の審判が確定するまでには通常1か月〜数か月程度の時間がかかるため、その間に財産が流出・毀損するおそれがある場合は、遺言執行者の職務執行を一時停止させる保全処分をあわせて申し立てます

④ 職務代行者選任の保全処分

職務執行停止中も相続手続きを止めたくない場合は、職務代行者の選任もあわせて申し立てることができます

解任の審判が確定すると、家庭裁判所から審判書謄本が発行されます。なお、審判の内容に不服がある場合、当事者は2週間以内に即時抗告をすることが可能です。また、解任後は遺言執行者が不在となるため、必要に応じて家庭裁判所に新たな遺言執行者の選任を申し立てることになります。

5. 遺言執行者解任に関する対応を弁護士兼税理士に依頼するメリットとは?

催告の段階から家庭裁判所への解任申立て、その後の対応まで、遺言執行者への一連の対応は次のような理由から早い段階で弁護士に依頼することをお勧めします。

催告

内容証明郵便による催告書の作成・送付を代理し、法的な効力を持つ形で「催告した事実」を残せます。弁護士名義の書面が届くこと自体が相手に強い緊張感を与え、それだけで手続きが動き出すケースも少なくありません

証拠収集

任務懈怠を裏付ける財産調査・やり取りの記録・期間経過の立証資料を、解任申立てに耐えられる形で整理できます

解任申立ての代理

家庭裁判所への解任申立書の作成、職務執行停止・職務代行者選任の保全処分の申立てまで一貫して代理できます

損害賠償請求

遺言執行者の任務懈怠によって財産が目減りするなどの損害が生じた場合、損害賠償請求を検討・代理できます

代理交渉

相続人ご本人が直接遺言執行者とやり取りすることによる感情的な対立を避け、専門家として冷静に交渉を進められます

特に、内容証明による催告と家庭裁判所への申立てを並行して準備する場面では、期限管理や書類の整合性が重要になります。ご自身で対応するよりも、早期に専門家へ相談したほうが結果的に解決が早まるケースが多くみられます。

6.遺言執行者に関するよくあるトラブル

【トラブル1】遺言執行者が音信不通になり、財産目録すら受け取れない

就任通知を送ってきたきり連絡が取れなくなり、預貯金がいつまでも凍結されたままというケースです。状況を確認したうえで、早めに催告と解任申立ての準備を進める必要があります。

【トラブル2】遺言執行者が一部の相続人とだけ連絡を取り、他の相続人に情報を開示しない

特定の相続人にだけ状況を伝え、他の相続人には財産内容も進捗も知らされないケースです。公平性を欠く対応は解任事由になり得るため、情報開示を書面で求めることが第一歩になります。

【トラブル3】解任請求をしたが、決定までの間に遺言執行者が預金を使い込んでしまった

解任の審判確定までには一定の期間がかかるため、その間に財産が流出してしまう例があります。こうした事態を防ぐためにも、解任申立てと同時に職務執行停止・職務代行者選任の保全処分をあわせて検討することが重要です。

7.よくあるご質問

  1. 遺言執行者の解任は相続人一人でも申し立てられますか?
  2. はい、可能です。解任を求める権利は相続人や受遺者などの利害関係人にあり、複数の利害関係人がいる場合でも、代表者1名が申立人となって手続きを進めることができます。
  3. 解任が認められるまでどのくらいかかりますか?
  4. 事案の内容や裁判所によって異なりますが、申立てから審判の確定まで通常1か月〜数か月程度を見込んでおくとよいでしょう。相手方が争ってくる場合はさらに長引くこともあります。その間の財産流出が心配な場合は、職務執行停止の保全処分をあわせて申し立てることをご検討ください。
  5. 遺言執行者に催告しても無視されたらどうすればいいですか?
  6. まずは内容証明郵便で催告を行い、「相当期間、任務が履行されなかった」という事実を証拠化しておくことが重要です。それでも状況が変わらない場合は、家庭裁判所への解任申立てへと進みます。
  7. 遺言執行者が解任されたら、その後の手続きはどうなりますか?
  8. 家庭裁判所に新たな遺言執行者の選任を申し立てることも、相続人だけで手続きを継続することも可能です。ただし、子の認知や相続人の廃除など一部の手続きは遺言執行者でなければ行えないため、内容によっては新たな選任が必要になります。
  9. 川崎市外や遠方に住んでいても相談できますか?
  10. もちろん可能です。当事務所は川崎市中原区・武蔵小杉駅周辺にございますが、高津区・幸区・宮前区といった近隣エリアはもちろん、横浜市や東京都内など遠方にお住まいの相続人様からのご相談にも数多く対応しております。亡くなられた方が川崎市内にお住まいだった場合、管轄となる横浜家庭裁判所川崎支部への対応も、地元の事務所としてスムーズに行うことができます。

8.遺言執行者への対応でお困りの方は当事務所へご相談を

川崎市中原区・武蔵小杉あおば法律事務所は、弁護士7名・事務職8名の総勢15名体制で相続案件を中心に取り扱い、これまで800件以上の相続相談に対応してまいりました。代表弁護士(弁護士兼税理士)は弁護士歴20年以上のキャリアを持ち、法律論だけでなくご親族間の感情的な対立にも配慮した解決策をご提案いたします。遺言執行者への催告書作成から解任申立て、保全処分の手続き、その後の新たな遺言執行者選任まで、一貫してサポートいたします。武蔵小杉駅周辺はもちろん、高津区・幸区など近隣にお住まいの方からのご相談も承っております。「様子を見ているうちに相続税の期限が迫ってしまった」と後悔することのないよう、進捗に不安を感じた時点でお早めにご相談ください。

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この記事を担当した専門家
神奈川県弁護士会所属 代表弁護士 長谷山 尚城
保有資格弁護士 FP2級 AFP 宅地建物取引士試験合格(平成25年)
専門分野相続・不動産
経歴1998年 東京大学法学部卒業
2000年 司法試験合格
2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)
2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)
2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設
2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長
2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事
2020-23年 法テラス川崎副支部長
2024-25年 法テラス神奈川副所長
2025年~ 神奈川県弁護士会副会長
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