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海外在住の相続人がいる場合の相続手続きとは?注意点を弁護士が解説!

2026.07.07
海外在住の相続人

「相続人の一人が海外に住んでいて、遺産分割協議がなかなか進まない」「印鑑証明書が取れないと言われたが、どうすればいいのか」~国際化が進む今、海外在住の相続人がいるご相続は決して珍しくありません。

武蔵小杉・川崎エリアでも、お子さんが海外赴任中・国際結婚で海外在住といったご家庭からのご相談が増えています。海外在住の相続人がいる場合、遺産分割協議そのものは通常どおり進められますが、印鑑証明書や住民票が取得できないため、サイン証明・在留証明といった特有の書類が必要になります。本コラムでは、海外在住の相続人がいる場合の相続手続きの進め方と注意点について、弁護士がわかりやすく解説します。

海外在住の相続人がいる相続の特徴と注意点とは?

結論からお伝えすると、海外在住の相続人がいても、その方を除外して相続手続きを進めることはできません。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、一人でも欠けると協議は無効になります。この点、海外在住の相続人がいる相続には、主に次の特徴があります。

  • 印鑑証明書・住民票が取得できない:海外に転出して日本の住民登録を抹消すると、印鑑登録も同時に抹消されます。日本国内であれば川崎市中原区役所などの窓口で住民票や印鑑証明書をすぐ取得できますが、海外在住の場合はそれができません。そのため、これらの代わりとなる書類(サイン証明・在留証明)を現地の在外公館で取得する必要があります。

  • 書類の収集・郵送に時間がかかる:国際郵便のやりとりや、現地の在外公館への出向きが必要になるため、国内だけで完結する相続よりも手続きに23倍の時間を要するのが一般的です。

  • 相続税の申告期限(10か月)に注意:相続税の申告・納付期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。書類収集に時間がかかるため、期限管理が特に重要になります。

  • 準拠法・課税範囲の判断が必要なケースがある:被相続人が日本国籍であれば、相続人が海外在住でも日本の民法に従って手続きを行います(法の適用に関する通則法第36条「相続は、被相続人の本国法による」)。一方、外国籍が絡む場合は準拠法の検討が必要になることがあります。

なお、被相続人が亡くなった時点で日本国内に住所があった場合、相続人が何十年も海外に住んでいても「無制限納税義務者」として国内外すべての財産が相続税の課税対象となる点にも注意が必要です。課税範囲は被相続人・相続人の住所と国籍の組み合わせで決まるため、早めに専門家に確認することをおすすめします。

海外在住の相続人がいる遺産分割協議の進め方を弁護士が解説!

「海外にいる相続人とは、そもそも話し合いが成立するのか」と不安に思われるかもしれません。私が20年以上の弁護士実務の中で多くの相続案件に携わってきた経験から言いますと、海外在住の相続人がいても、全員が一堂に会する必要はなく、協議自体は問題なく進められます。電話・メール・Zoom等のオンライン会議ツールを使って協議を進めることができます。協議がまとまった後の流れは、おおむね次のとおりです。

  1. 相続人の人数分の遺産分割協議書を作成する。
  2. 海外在住の相続人へ遺産分割協議書を郵送する。
  3. 海外在住の相続人が、現地の在外公館(日本大使館・総領事館)へ協議書を持参し、領事の面前で住所を記入し署名(サイン)・拇印する。
  4. 領事にサイン証明を発行してもらい、協議書と綴り合わせて割印してもらう(不動産登記で求められる「貼付型/形式1」)。
  5. 協議書とサイン証明一式を、国内の相続人へ返送する。
  6. 各相続人が、不動産の相続登記・預貯金の解約等の相続手続きを行う。

海外在住の相続人が一時帰国できる場合は、日本国内の公証役場でサイン証明を取得することも可能です。この場合、不動産登記には在留証明が別途必要になる点に留意しましょう。

海外在住の相続人に必要な書類について

海外在住の相続人が用意する主な書類は、印鑑証明書に代わる「サイン証明」と、住民票に代わる「在留証明」です。それぞれの概要を整理します。

書類

代わりとなる国内書類

取得場所

手数料の目安

サイン証明(署名証明)

印鑑証明書

現地の在外公館(領事の面前で署名)

1通あたり1,700円相当(現地通貨で支払い)

在留証明

住民票

現地の在外公館

1通あたり1,200円相当(現地通貨で支払い)

相続証明書(出生・婚姻証明書等)

戸籍謄本(外国籍の場合)

国籍国の公的機関等

国・機関により異なる

印鑑証明に代わるサイン証明・在留証明

サイン証明(署名証明)は、海外在住の相続人が在外公館で署名したことを領事が証明する書類で、日本の印鑑証明書と同等の効力を持つものとして扱われます。証明方法には2種類あり、(1)協議書と綴り合わせて割印する貼付型(形式1)と、(2)署名のみを単独で証明する単独型(形式2)があります。不動産の相続登記では原則として(1)の貼付型が求められるため、どちらが必要かを事前に提出先へ確認することが重要です。

在留証明は、現地の住所を証明する書類で、住民票の代わりになります。海外在住の相続人が不動産を相続して登記名義人になる場合などに必要です。発給を受けるには、日本国籍を有していること、現地に3か月以上滞在している(または今後3か月以上の滞在が見込まれる)ことが要件となります。不動産の相続登記では本籍地の記載が求められることがあるため、申請時に本籍地入りで取得するよう希望しましょう(本籍地の番地まで記載する場合は戸籍謄本等の提出が必要です)。

【最新情報】

外務省は2025年5月27日以降に申請する在留証明について、オンライン在留届(ORRネット)経由で電子証明書(e-証明書)をオンライン受領できるサービスを開始しました。また2025年3月24日以降は、在外公館での証明申請時に必要な戸籍謄(抄)本を「戸籍電子証明書提供用識別符号(電子戸籍パス)」で代用できるようになっています。
ただし、便利になった反面、2026年現在の実務の現場では、日本の提出先(法務局や地方銀行の窓口)がこうした電子化された書面の形式に必ずしも慣れておらず、受理がスムーズに進まない過渡期的なケースも見られます。その形式で受理してもらえるか、登記の方法(書面かオンラインか)も含めて事前に提出先へ確認しておかないと、二度手間になるリスクがあります。こうした最新システムと現場実務とのギャップを見極めるのも、私たち専門家の役割だと考えています。

※なお、相続人がすでに日本国籍を離脱して外国籍(アメリカ国籍など)を取得している場合、原則として日本の在外公館でサイン証明・在留証明は取得できません。この場合は、出生証明書・婚姻証明書等の「相続証明書」や、居住国の公証人による宣誓供述書(署名証明)で代替することになります。外国語の書類には日本語の翻訳文の添付が必要です。

【ワンポイント】相続放棄をする場合には在留証明は原則不要?

海外にいる相続人が「実家の遺産はいらないので、相続放棄をしたい」と希望することがあります。インターネット上の解説では「家庭裁判所への相続放棄の申述に、現住所を証明する在留証明書は原則不要」と書かれているのをよく見かけます。しかし、これは実務上、大きな誤解を生む原因になります。
確かに、最初の申述書を提出する段階では、戸籍謄本等がそろっていれば受け付けてもらえる家庭裁判所もあります。しかし、相続放棄の手続きでは、家庭裁判所から海外にいる本人宛てに「本当にご自身の意思で間違いないか」を確認する書類(照会書)を郵送し、本人がそれに回答して返送するというステップを求められるのが通常です。
家庭裁判所としては、海外の住所へ確実に書類を届ける(送達する)必要があるため、実務上は在留証明書、またはそれに代わる現地の住所証明書の提出を求められるケースがほとんどです。
国内での相続放棄と同じ感覚で書類はいらないだろうと考えていると、海外との往復書簡に想定以上の時間がかかり、法律で定められた熟慮期間(自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内)に間に合わなくなる、という事態になりかねません。なお、この熟慮期間は、事情によっては家庭裁判所へ伸長(しんちょう)を申し立てられる場合がありますが、いずれにしても早めの対応が前提です。
海外在住の方の相続放棄こそ、一刻も早く弁護士へご相談いただくべき案件といえます。

海外在住の相続人がいる遺産分割でよくあるトラブルと対処法とは?

【トラブル1】相続税の申告期限(10か月)に書類が間に合わない

海外との書類のやりとりや在外公館での手続きに想定以上の時間がかかり、申告期限までに遺産分割がまとまらないケースは少なくありません。期限を過ぎると延滞税等のペナルティが生じるおそれがあります。

【対処法】

期限までに話し合いがまとまらない場合は、いったん法律で定められた割合(法定相続分)で遺産を分けたと仮定して、期限内に「未分割申告(みぶんかつしんこく)」を行い、あわせて「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を税務署に提出しておきます。 こうしておけば、期限から3年以内に遺産分割が確定した段階で、確定した内容に応じて精算ができます。具体的には、当初の納めすぎを取り戻す場合は「更正の請求」(減額・還付)、逆に納め足りなくなる場合は「修正申告」(増額)を行います。これにより、期限遅れのペナルティ(過少申告加算税や延滞税)を回避できます。

【弁護士兼税理士の知恵:未分割申告の隠れた落とし穴】

「後から精算すればいいなら安心だ」と思われるかもしれませんが、ここに大きな罠があります。最初の未分割申告の段階では、税金を大幅に安くできる「配偶者の税額軽減(16,000万円までの非課税枠)」や、武蔵小杉の自宅マンション等の評価を最大80%下げられる「小規模宅地等の特例」が一時的に適用できません。つまり、最終的な着地点よりも遥かに高額な相続税を、いったん全額現金(キャッシュ)で国に納めなければならないのです。後から戻ってくるとはいえ、一時的な金銭負担は非常に重いため、やはり10か月の期限内に遺産分割を成立させることが最善です。そのためにも、早期に相続実務に強い弁護士・税理士へ相談することが重要になります。

【トラブル2】サイン証明の「型」を間違えてやり直しになる

不動産の相続登記では貼付型(形式1)のサイン証明が必要なのに、単独型(形式2)で取得してしまい、法務局で受理されずに再度在外公館へ出向くことになる、というケースがあります。海外では公館が遠方にあることも多く、再取得には多大な時間がかかります。

【対処法】

海外在住の家族に現地公館へ行ってもらう前に、必ず日本の提出先(手続きを行う法務局や各金融機関)へ「どの手続きで、どの形式のサイン証明が必要か」をピンポイントで確認し、海外の家族に正確に伝えておくことが不可欠です。 特にアメリカや中国、豪州などの広大な国では、「最寄りの日本総領事館へ行くために、国内線の飛行機や車で丸一日かけて移動しなければならない」というケースも珍しくありません。一度の渡航・一度の手続きで完璧に終わらせるために、事前に私どものような専門家が書類のひな形や必要形式を整理した上で、海外のご家族へご案内することをお勧めします。

【トラブル3】連絡が取りづらく、協議がまとまらない・感情的に対立する

武蔵小杉や川崎エリアは、大手メーカーや外資系企業、IT企業などにお勤めで、ご家族が海外赴任されているケースが非常に多い地域です。当事務所にいただくご相談でも、「海外にいるきょうだいや親族と連絡が取れない」というお悩みは大きな割合を占めます。 「日本とアメリカ西海岸では十数時間の時差があり、お互いの仕事終わりの時間帯が合わない」「ヨーロッパ在住の親族への国際郵便が往復するだけで数週間かかる」といった物理的なハードルが、話し合いをどんどん長期化させます。さらに、長年離れて暮らしていて疎遠だったために、分割方法をめぐってひとたびボタンの掛け違いが起きると、感情的な泥沼の対立に発展してしまうこともあります。

【対処法】


連絡が滞ったり、感情的な対立の兆候が見えたりした場合は、早期に弁護士を代理人として間に挟むことが最も有効な解決策です。 相続実務に精通した弁護士があなたの代わりに窓口となり、時差や国際郵便の手間を引き受け、海外在住の相続人に対して法律的な根拠に基づいた「公平で冷静な分割プラン」を提示します。当事者同士が直接話し合うストレスをなくすことで、海外にいるご親族も安心して聞く耳を持ってくれるようになり、結果として早期の円満解決へと繋がります。

弁護士に海外相続の遺産分割を相談するメリットとは?

海外在住の相続人がいる相続を弁護士に相談する主なメリットは次のとおりです。

  • 代理人として遺産分割協議に参加できる:海外在住の相続人の代わりに弁護士が協議に加わることで、手続きにかかる時間を短縮し、専門的見地から話し合いをまとめやすくします。
  • 書類の種類・取得方法を事前に整理できる:サイン証明の型、在留証明の本籍地記載、翻訳の要否など、間違えるとやり直しになるポイントを先回りして確認します。
  • 準拠法・課税範囲の見極めができる:外国籍が絡む場合の準拠法(本国法・反致)や、無制限/制限納税義務者の判定など、専門的な論点に対応できます。
  • 法務と税務を一括で任せられる:当事務所では、担当弁護士が税理士資格も保有しているため、遺産分割の法務だけでなく、10か月の申告期限を見据えた相続税のスケジュール管理や未分割申告の要否まで、ワンストップでお任せいただけます。

よくあるご質問

  1. 海外在住の相続人を外して遺産分割協議をしてもよいですか?
  2. できません。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、一人でも欠けると協議は無効になります。海外在住の相続人もオンライン等で参加してもらう必要があります。
  3. 海外にいてもオンラインで遺産分割協議に参加できますか?
  4. 可能です。電話・メール・Zoom等のオンライン会議ツールを使って協議を進められます。協議成立後、協議書への署名はサイン証明とあわせて在外公館で行います。
  5. サイン証明と在留証明の取得費用はいくらですか?
  6. 在外公館での取得費用の目安は、サイン証明が1通あたり1,700円相当、在留証明が1通あたり1,200円相当で、いずれも現地通貨で支払います。為替レートや国により多少前後します。
  7. 相続人が日本国籍を離脱して外国籍を取得している場合はどうすればよいですか?
  8. 原則としてサイン証明・在留証明は取得できないため、出生証明書・婚姻証明書等の相続証明書や、居住国の公証人による宣誓供述書で代替します。外国語の書類には日本語の翻訳文が必要です。
  9. 申告期限までに遺産分割がまとまりそうにありません。どうなりますか?
  10. 法定相続分で計算した未分割申告を期限内に行い、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、期限遅れのペナルティは避けられます。分割確定後に更正の請求(減額)や修正申告(増額)で精算します。ただし、未分割の状態では「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった大幅な節税措置が一時的に使えず、いったん高額な相続税を現金で納める必要がある点に注意が必要です。可能な限り10か月の期限内に分割を成立させることをおすすめします。
  11. 海外在住の相続人が相続放棄をする場合、在留証明は本当に不要ですか?
  12. 「不要」と説明されることがありますが、実務上は注意が必要です。最初の申述書の提出時は戸籍謄本等で受け付けられる場合もありますが、その後、家庭裁判所が本人の意思を確認する書類(照会書)を海外の住所へ送達するため、在留証明書やこれに代わる現地の住所証明書の提出を求められるケースがほとんどです。海外との往復に時間がかかると熟慮期間(3か月以内)に間に合わなくなるおそれがあるため、早めに弁護士へご相談ください。

遺産分割でお困りなら当事務所へご相談を

海外在住の相続人が一人でもいると、時差や距離の壁だけでなく、次のような複雑な問題が同時に押し寄せます。

  • 日本の印鑑証明や住民票の代わりに、海外でどの書類をどの形式で取るべきかの判断
  • サイン証明の「貼付型」の厳格な手配
  • 相続税の申告において、国内外の全財産をどのように評価し、10か月の期限内に収めるか
  • 最新の電子証明書(e-証明書)を、地元の銀行や法務局にスムーズに受け付けさせるための事前交渉

このように、海外在住の相続手続きを円満かつスピーディーに進めるためには、民法(遺産分割協議・相続放棄)の知識だけでなく、税法(海外財産への課税範囲の判定)や、各種機関との交渉実務という、すべての視点を網羅していなければなりません。

川崎・武蔵小杉エリアの当事務所では、相続・遺産分割に注力する弁護士が、税理士資格を活かして法務と税務(相続税の申告期限・課税範囲・未分割申告)の両面から一貫してサポートします。「まず何から手をつければよいか分からない」という段階でも問題ありません。必要書類の整理と段取りからお手伝いしますので、海外在住の相続人がいてお困りの際は、お早めに当事務所へご相談ください。

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この記事を担当した専門家
神奈川県弁護士会所属 代表弁護士 長谷山 尚城
保有資格弁護士 FP2級 AFP 宅地建物取引士試験合格(平成25年)
専門分野相続・不動産
経歴1998年 東京大学法学部卒業
2000年 司法試験合格
2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)
2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)
2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設
2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長
2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事
2020-23年 法テラス川崎副支部長
2024-25年 法テラス神奈川副所長
2025年~ 神奈川県弁護士会副会長
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