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開業医・医療法人の相続と事業承継の仕組みとは?弁護士が解説

2026.05.08

開業医・医療法人の相続と事業承継の仕組みとは?弁護士が解説

1.開業医の相続が一般家庭と根本的に異なる理由

一般家庭の相続と、開業医・クリニックの相続は根本的に異なります。

通常の相続は「財産をどう分けるか」が中心課題です。しかし医療機関の相続では、財産の分割と同時に「診療をどう継続させるか」という事業承継の問題が不可分に絡みます。

たとえば、相続人間で遺産分割の合意ができても、保険医療機関の指定の再取得や開設者変更届の提出が遅れれば、診療報酬の請求が止まります。スタッフへの周知が不十分であれば、一斉退職が起きることもあります。

相続手続きが完了しても、診療が止まれば意味がありません。

医療機関の相続は、法務・税務・経営の三つを同時に動かす必要があります。

2.開業医・医療法人それぞれの相続手続きと注意点

クリニックの相続は、開業形態によって仕組みが根本から変わります。

個人開業(開業医)の場合

診療所の資産(土地・建物・医療機器・預貯金など)はすべて院長個人の財産です。相続発生と同時に、これらが法定相続人の共有財産になります。

問題は、診療所の土地・建物が共有になった瞬間、後継者が自由に使えなくなる点です。売却・建替え・担保設定にはすべての共有者の同意が必要になります。

また、個人開業の場合、院長の死亡と同時に保険医療機関の指定は失効します。後継者が速やかに新規指定申請を行わなければ、診療報酬の請求ができない空白期間が生じます。

医療法人の場合

医療法人では、院長個人の財産と法人の財産は分離されています。相続の対象になるのは、院長が保有する出資持分(持分あり医療法人の場合)や理事長の地位をめぐる問題です。

注意が必要なのは、出資持分の相続税評価額です。法人の純資産をもとに評価されるため、実際の換金価値より大幅に高くなるケースがあります。多額の相続税が発生し、納税資金の確保のために法人資産を取り崩さざるを得なくなった事例も存在します。

なお、現在国は「持分なし医療法人」への移行を推奨しており、認定医療法人制度を活用した移行も選択肢の一つです。認定医療法人制度とは、一定の要件を満たした持分あり医療法人が持分なしへ移行する際に、出資者への贈与税等の課税を猶予・免除する仕組みです。移行を検討する場合は、税務・法務の専門家に早期に相談することが重要です。

3.開業医の相続でよくある誤解と、準備不足が招くリスク

医療機関の相続では、以下のような誤解が深刻な問題につながります。

「家族で話し合えば自然に決まる」 相続発生後に利害対立が表面化し、遺産分割が長期化するのが典型的なパターンです。感情的な対立になると、当事者間での解決はほぼ不可能になります。

「医師の子どもがいるから問題ない」 医師資格があっても、診療科が異なる・経営経験がない・承継の意思がないといった問題は別途存在します。後継者が決まっていても、承継の設計がなければ機能しません。

「相続税は財産の話で、事業とは別」 医療法人(持分あり)の場合、出資持分は相続税の課税対象となり、法人の純資産をもとに評価されるため、実際の換金価値を大幅に上回る高額評価になることがあります。個人開業の場合も、土地・建物・医療機器に加え、診療実績に基づく営業権(のれん)が課税対象となりえます。いずれも想定外の高額評価により、納税資金の確保に追われるケースは珍しくありません。

放置した場合のリスクをまとめると以下の通りです。

放置した状況

生じるリスク

後継者が未定

廃院・スタッフ解雇・診療報酬請求停止

遺言書・承継計画が未整備

相続人間の紛争・家庭裁判所の関与

出資持分の評価未対応

高額相続税・納税資金不足による資産売却

4.開業医・医療法人の相続で弁護士に依頼するメリット

医療機関の相続・承継に弁護士を関与させることで、以下の点で実質的な差が生まれます。

遺言書の設計と法的有効性の確保 医師の相続では、誰に何を承継させるかの設計が複雑です。医療資産の帰属、出資持分の行方、代償金の設定、遺留分への対応——これらを法的に有効な形で遺言書に落とし込むには、専門的な設計が必要です。公正証書遺言での作成が最も安全であり、弁護士が関与することで形式不備による無効リスクを排除できます。

遺留分への対応 2018年民法改正(20197月施行)により、遺留分侵害があった場合の請求は「財産の返還」ではなく「金銭での精算」に変わりました。これにより、特定の相続人に医療資産を集中させる遺言を書いても、他の相続人への対応は金銭で行えるようになっています。ただし、その分だけキャッシュの準備が重要になります。弁護士はこの遺留分対策の設計を含めて関与します。

相続発生後の紛争対応 準備が不十分なまま相続が発生した場合、弁護士は遺産分割協議の交渉代理や調停・審判への対応を担います。医療資産の評価をめぐる対立や、非医師の相続人との代償金交渉は、当事者間での解決が困難なケースがほとんどです。

5.川崎市・横浜市でクリニック・医療法人の相続をお考えの方へ

以下に当てはまる場合は、早めの対応が必要です。

  • 個人開業か医療法人かにかかわらず、承継の計画が具体化していない
  • 遺言書を作成していない、または内容が古い
  • 出資持分の評価や遺留分対策を検討したことがない
  • 相続人間で承継についての合意ができていない

医療機関の相続は、準備の有無で結果が大きく変わります。相続発生後からでは対応できる選択肢が限られます。

相続に関する初回相談(60分)は無料です。現状の整理だけでも、ぜひお早めにご相談ください。

【無料相談受付中】川崎市中原区・武蔵小杉駅前の法律事務所 開業医の相続・事業承継に対応できるチームが、円滑な承継をサポートします。川崎市内はもちろん、横浜市や都内からのご相談にも迅速に対応しております。

この記事を担当した専門家
神奈川県弁護士会所属 代表弁護士 長谷山 尚城
保有資格弁護士 FP2級 AFP 宅地建物取引士試験合格(平成25年)
専門分野相続・不動産
経歴1998年 東京大学法学部卒業
2000年 司法試験合格
2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)
2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)
2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設
2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長
2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事
2020-23年 法テラス川崎副支部長
2024-25年 法テラス神奈川副所長
2025年~ 神奈川県弁護士会副会長
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