川崎市で遺産分割・遺留分のお悩みを解決!相続初回相談無料です

武蔵小杉駅より徒歩3分

LINEで相談予約

お電話でのお問い合わせ相続相談の予約フォーム

044-789-5441

平日9:30〜17:30

Q 兄弟が親の預金を勝手に使い込んでいました。返還請求(不当利得返還請求)に時効はありますか?

2026.09.04
Q 兄弟が親の預金を勝手に使い込んでいました。返還請求(不当利得返還請求)に時効はありますか?
Aはい、あります。使い込みの事実を知った時から5年、または使い込みが行われた時から10年のいずれか早い方が経過すると、消滅時効によって請求できなくなります(民法1661項)。

川崎・武蔵小杉エリアでも、「親と同居していた兄弟が、預金を勝手に引き出していたようだ」というご相談は非常に多く寄せられます。相続開始からしばらく経って財産調査を進める中で判明することも珍しくなく、気づいた時にはすでに時効の完成が目前に迫っている、というケースも少なくありません。

特に、被相続人(親)の生前から使い込みが続いていた場合は、相続開始の時点ですでに時効の進行が始まっていることがあり、注意が必要です。

【解説】

1 不当利得返還請求権とは何か

不当利得返還請求権とは、法律上の正当な理由がないのに他人の財産や利益を得て、そのために他人に損失を生じさせた者に対し、その利益の返還を求める権利です(民法703条・704条)。

相続の場面では、被相続人と同居していた相続人が、通帳やキャッシュカードを使って無断で預金を引き出し、自分のものとしてしまっていたようなケースが典型例です。

なお、使い込みが「被相続人の生前」に行われたか、「相続開始後・遺産分割前」に行われたかによって、請求権の性質や承継のされ方が異なります。

2 時効期間のルール(二重の期間制限)

不当利得返還請求権の消滅時効は、次の2つの期間のうち、いずれか早い方が経過した時点で完成します(民法1661項)。

  • 使い込みの事実」と「誰が使い込んだか」を知った時から5年間(専門用語で「主観的起算点」といいます)
  • 実際に使い込みが行われた時から10年間(同じく「客観的起算点」といいます)

たとえば使い込みから8年後に発覚したケースでは、発覚時から5年を待たずに、使い込みが行われた時から10年で時効が完成してしまう可能性があります。逆に、発覚が早くても、そこから5年放置すれば時効が完成します。二つの期間を常に両にらみで管理する必要があります。

3 起算点はいつか?相続特有の注意点

使い込みが行われた時」に被相続人が生存していたか、亡くなった後かによって、時効の進行の仕方が異なります。

  • 被相続人の生前に使い込みがあった場合:不当利得返還請求権はまず被相続人本人に発生します。被相続人が亡くなると、金銭債権のような分けられる権利(可分債権)は相続開始と同時に法定相続分に応じて当然に分割され、各相続人が単独で承継するという確立した判例法理があります(最高裁昭和2948日判決)。そのため、相続開始の時点ですでに時効が進行しており、ご相談いただいた時点で完成間近ということも少なくありません。
  • 相続開始後・遺産分割前に無断で預金が引き出された場合:各相続人が、自己の法定相続分に相当する部分について、直接請求権を持ちます。この場合は、引き出し行為があった時から時効が進行します。

また、実務上は「知った時」の認定自体が争点になりやすい点にも注意が必要です。単に通帳の残高が減っていることに気づいた時点ではなく、誰が・どのような経緯で引き出したのかという、不当利得の成立を基礎づける具体的な事実を認識した時点、と判断されるのが一般的です。

実際の相談現場でも、「いつ使い込みを知ったか」の証明はよく争いになります。相手方から「もっと前から知っていたはずだ、だから時効だ」と反論されるケースも珍しくありません。そのため、いつ、どのような経緯で通帳の履歴を確認したのかを詳細に整理し、証拠として固めておくことが重要になります。

※相続開始後の使い込みについては、民法906条の2に基づき、他の相続人全員の同意(使い込みをした相続人本人の同意は不要)があれば、遺産分割協議の中でまとめて清算することもできます。どちらの方法が向いているかは、次のような基準で考えます。

  • 遺産分割協議での清算が向いているケース:他に分けるべき遺産(不動産など)があり、相手方も使い込みの事実を大枠で認めている場合
  • 不当利得返還請求(訴訟)が向いているケース:相手方が使い込みを完全に否定している場合、または遺産分割協議がすでに成立・難航しており、時効の完成が迫っている場合

4 時効の完成を止める方法

時効の完成が近づいている場合、証拠に残らない口頭のやり取りだけに頼るのはリスクがあります。確実に時効を止める、または確定的にリセットするには、次のような対応が必要です。

  • 内容証明郵便による催告:催告の時から6か月間、時効の完成が猶予されます
  • その猶予期間内に、訴訟提起や調停申立てなどの裁判上の請求を行うことで、時効が更新されます

財産調査(金融機関への取引履歴の開示請求など)に時間がかかりそうな場合は、まず内容証明郵便で時効の完成を猶予させたうえで、並行して証拠収集を進めるのが実務上の定石です。ご自身で内容証明郵便を送ろうか迷っているうちに時間が過ぎてしまう方も少なくありません。時効が迫っている場合は、弁護士が速やかに介入して内容証明郵便を送ることで、まずは時効の完成を止めることが重要です。

実務上、特に注意が必要なのが「金融機関からの取引履歴の取り寄せ」です。銀行に取引履歴を請求してから開示されるまで12か月程度かかることも珍しくありません。「正確な金額がわかってから動こう」と待っている間に、時効が完成してしまう恐れがあります。金額が確定していなくても、まずは概算で時効を止める催告を行うなど、スピード感を持った対応が欠かせません。

5 わざと使い込んでいた場合は、別の請求方法も

使い込みは、不当利得返還請求だけでなく、わざと(悪意で)権限なく引き出していた場合には、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)として構成することもできます。両者は時効期間が異なります。

  • 不当利得返還請求:知った時から5年/使い込みが行われた時から10
  • 不法行為に基づく損害賠償請求:損害及び加害者を知った時から3年/使い込みが行われた時から20

どちらの時効も完成していない場合は、事案に応じて有利な方、あるいは両方の法的構成を選択的に主張することが一般的です。なお、不当利得返還請求として構成する場合、使い込みをした相続人が利得について悪意(自分に権利がないと知りながら受け取っていたこと)であったときは、利息を付して返還する義務に加え、なお損害があれば賠償責任も生じます(民法704条)。

6 よくある誤解

誤解:遺産分割協議が終わっていないから、時効は進行しない

→ 誤りです。時効は遺産分割の進行状況とは無関係に、使い込みを知った時・行われた時を起点として独立して進行します。

誤解:相続放棄(3か月)や遺留分侵害額請求(1年)と同じ期間制限だと思っている

→ 誤りです。不当利得返還請求の時効は民法1661項に基づく別の制度であり、期間もまったく異なります。

誤解:使い込みに気づいて、相手に「返してほしい」と伝えているから安心だ

→ 一部誤りです。相手に返還を求める意思を伝えること自体は、口頭であっても法律上の「催告」に当たり、その時から6か月間、時効の完成を一時的に先延ばしにする効果があります(民法150条。方式に制限はありません)。ただし、口頭や単なる話し合いでは「いつ、どのような内容を伝えたか」を客観的に証明することが難しく、後日相手方から「そんな話は聞いていない」「時効はとうに完成している」と争われた場合、証拠不足で対抗できないおそれがあります。また、催告による猶予はあくまで6か月間の一時的なものにすぎず、その間に訴訟提起や調停申立てなど、時効を確定的にリセットする手続をとる必要があります。確実な証拠を残すためにも、内容証明郵便(配達証明付き)で行うのが実務上の原則です。

7 弁護士に相談すべきケース

  • 預金通帳や取引履歴を確認したところ、身に覚えのない多額の出金があった
  • 同居していた相続人から使い込みを指摘され、事実関係を整理して反論したい
  • 使い込みの発覚が遺産分割協議の途中で、時効の完成が目前に迫っている
  • 使い込みをした相続人が、任意の話し合いや資料開示に応じない
  • 被相続人の生前から使い込みが続いていた疑いがあり、時効の進行状況を確認したい

8 まとめ

  • 不当利得返還請求権は、知った時から5年・行われた時から10年のいずれか早い方で消滅時効が完成する(民法166条1項)
  • 被相続人の生前の使い込みは、相続開始時点ですでに時効が進行している場合があり、特に注意が必要
  • 時効を止めるには証拠に残る形での催告(内容証明郵便が原則)が必要で、口頭のやり取りは証明が難しく不確実。催告による猶予(6か月)はあくまで一時的なもので、その間に訴訟提起等での確定的なリセットが必要
  • 不法行為構成(3年/20年)との使い分けも実務上重要な選択肢

ご相談のご案内

遺産の使い込みをめぐる不当利得返還請求は、時効の管理と証拠収集を並行して進める必要があり、対応が後手に回ると取り戻せる金額に大きな差が出てしまいます。

当事務所では、弁護士として数多くの相続案件に携わってきた経験に基づき、財産調査から時効の管理、交渉・訴訟までを一貫してサポートしています。「ほかの相続人から財産の使い込みを指摘された」という逆の立場のご相談にも対応しております

武蔵小杉・川崎エリアで相続財産の使い込みにお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

なお、税理士としての立場から一言付け加えると、不当利得返還請求のトラブルが解決していなくても、相続税の申告期限(相続開始から10か月以内)が延長されるわけではない点にご注意ください。申告期限までに解決が見込めない場合は、いったん法定相続分で申告したうえで、解決後に修正申告を行うといった対応が必要になります。弁護士と税理士の両方の視点から、法的な回収と税務上の期限管理を並行してサポートできる点が、当事務所の強みです。

この記事を担当した専門家
神奈川県弁護士会所属(登録番号29971)
東京地方税理士会所属(登録番号159302)
代表弁護士・税理士 長谷山 尚城
保有資格弁護士 税理士 FP2級 AFP
宅地建物取引士試験合格(平成25年)
専門分野相続・不動産
経歴1998年 東京大学法学部卒業
2000年 司法試験合格
2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)
2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)
2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設
2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長
2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事
2020-23年 法テラス川崎副支部長
2024-25年 法テラス神奈川副所長
2025年度 神奈川県弁護士会副会長
2026年  税理士登録
専門家紹介はこちら
PAGETOP PAGETOP
60分初回相談無料

044-789-5441

平日9:30〜17:30