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Q遺言書がない場合の相続手続きはどうすればよいですか?

2026.05.28

A 遺言書がない場合、相続手続きは「法定相続」のルールに従って進めることになります。ただし、手続きの数が多く、銀行や不動産登記など窓口ごとに必要書類が異なるため、全体の流れを把握した上で進めることが重要です。

本記事では、遺言書がない場合の相続手続きを、
①相続人の確定、②相続財産の確定、③遺産分割協議、④遺産分割協議書の作成、⑤各種名義変更・解約手続(銀行・不動産等)の順で解説します。

相続手続きの全体的な流れ

遺言書がない相続では、以下のステップで進みます。目安として、争いがなくスムーズに進んだ場合でも36ヶ月程度かかります。

STEP 1 相続人の確定(被相続人の出生〜死亡の戸籍謄本を収集)
STEP 2 相続財産の調査・一覧化(預貯金・不動産・負債など)
STEP 3 遺産分割協議(相続人全員で分割方法を合意)
STEP 4 遺産分割協議書の作成(全員署名・実印押印・印鑑証明添付)
STEP 5 各種名義変更・解約手続き(銀行・不動産・証券等)

STEP1|相続人を確定する

遺言書がない場合、誰が相続人になるかを戸籍で正確に確定することが最初の作業です。

収集が必要な戸籍
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 配偶者がいる場合は戸籍謄本(被相続人と同一であれば兼用可)

被相続人が複数回の転籍や戸籍改製をしている場合、取得先が複数の市区町村にわたることがあります。出生まで遡る戸籍収集は、戸籍実務に不慣れな方には手間がかかる作業です。

※ 相続人の中に認知された子や養子がいる場合は、それらも戸籍上で確認が必要です。

STEP2|相続財産を調査・確定する

相続財産の全体像を把握しないまま遺産分割を進めると、後から財産が出てきたときにトラブルになります。以下の財産を漏れなく調査します。

調査すべき主な財産
  • 預貯金・有価証券(残高証明書・取引明細の取得)
  • 不動産(固定資産税課税明細書・登記簿謄本で確認)
全国に不動産がある可能性がある場合

20264月に始まった「所有不動産記録証明制度」が有用です。法務局のシステムで全国の登記情報を一括検索し、証明書として取得できます。ただし、登記簿上の住所が旧住所のままだとヒットしないケースがある点に注意が必要です。

  • 生命保険(受取人が指定されていれば相続財産には含まれないが要確認)
  • 借入金・保証債務(消費者金融・カードローン含む)
  • 自動車・貴金属・骨董品等の動産

負債も相続の対象です。プラスの財産よりマイナスが多い場合は、相続放棄(3ヶ月以内)の検討が必要です。

STEP3|遺産分割協議を行う

遺産分割協議とは

相続人全員で「誰が何を相続するか」を話し合い、合意する手続きです。相続人が1名でも欠けると協議は無効となるため、全員の参加が必須です。

合意できない場合の手続き
  • 家庭裁判所に遺産分割調停を申立てる
  • 調停不成立の場合は遺産分割審判に移行する
  • 審判では裁判官が分割方法を決定する

相続人間に感情的な対立がある場合、弁護士が交渉代理人として協議に関与することで、当事者同士の直接対立を避けながら解決を図ることができます。

STEP4|遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議が成立したら、その内容を遺産分割協議書に明記します。この書類は銀行・法務局・証券会社など、あらゆる相続手続きで提出が求められます。

記載すべき内容
  • 被相続人の氏名・本籍・死亡年月日
  • 相続人全員の氏名・住所
  • 各財産の取得者(不動産は地番・地目・地積まで正確に記載)
  • 署名・実印の押印(全相続人)

※ 全相続人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)をあわせて添付します。

STEP5|①銀行の相続手続き

手続きの流れ
  • ① 各金融機関の相続窓口に死亡の連絡を入れ、口座を凍結する
  • ② 各金融機関の「相続届(名義変更・解約依頼書)」を取得する
  • ③ 必要書類を揃えて提出する
  • ④ 審査後、払い戻し・名義変更が完了(通常1〜2ヶ月)
必要書類(主なもの)
  • 被相続人の戸籍謄本一式(出生〜死亡)
  • 相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書
  • 遺産分割協議書(実印押印・印鑑証明添付済み)
  • 払い戻しを受ける相続人の通帳・届出印

口座数が多い場合、各行でそれぞれ手続きが必要です。法定相続情報一覧図(法務局が発行する相続関係を証明する書類)を取得しておくと、戸籍謄本の原本を何度もコピー提出する手間を省けます。

STEP5|②不動産の相続登記(所有権移転登記)

20244月から相続登記が義務化されました

相続によって不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません(義務化は202441日施行)。正当な理由なく申請しない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

過去の相続も対象です。20244月以前に相続が発生した場合でも、2027331日までに登記が必要です。

申請先・手続きの流れ
  • ① 固定資産税課税明細書・登記簿謄本で対象不動産を確定する
  • ② 遺産分割協議書で不動産の取得者を確定する
  • ③ 登記申請書・必要書類を準備して法務局に申請する
  • ④ 登記完了(通常1〜2週間)
必要書類(主なもの)
  • 登記申請書
  • 被相続人の戸籍謄本一式(出生〜死亡)・住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 取得者の住民票
  • 遺産分割協議書・印鑑証明書
  • 固定資産税評価証明書(登録免許税の計算に必要)

 

※ 登録免許税は不動産の固定資産税評価額の0.4%です。

※ 複数の不動産を相続する場合・共有不動産の場合・農地の場合は手続きが複雑になります。

STEP5|③その他の名義変更手続き

  • 自動車:陸運局(または自動車検査登録事務所)で移転登録
  • 有価証券・証券口座:各証券会社の相続手続き窓口で手続き
  • 生命保険:受取人から保険会社への請求(死亡診断書・戸籍等)
  • 相続税の申告:税務署(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)

手続き別・期限一覧

手続き

期限

注意点

相続放棄・限定承認

相続開始を知った日から3ヶ月以内

期限超過で単純承認とみなされる(要注意)

準確定申告

相続開始を知った日から4ヶ月以内

被相続人の所得税申告。延滞税・加算税に注意

相続税の申告・納付

相続開始を知った日から10ヶ月以内

期限超過で延滞税・無申告加算税が発生

相続登記(不動産)

不動産取得を知った日から3年以内

義務化。違反で10万円以下の過料

銀行・証券等の手続き

法定期限なし

早期手続きを推奨(口座凍結中は引出し不可)

こんな場合は弁護士への相談をおすすめします

  • 相続人の間で遺産の分け方について意見が合わない
  • 相続人の中に連絡がとれない・話し合いに応じない人がいる
  • 相続財産の調査が難しい(隠し資産・負債の疑いがある)
  • 遺産分割協議書の作成内容に不安がある
  • 相続放棄を検討しているが判断に迷っている
  • 不動産の評価額や代償金の額をめぐって対立している

川崎市・横浜市で相続手続きにお悩みの方へ

当事務所では、遺言書がない場合の相続手続や遺産分割協議の代理・サポートから、相続発生後の紛争対応まで取り扱っています。相続に関する初回相談(60分)は無料です。

「何から手をつけていいかわからない」という段階からでも、ぜひお気軽にご相談ください。川崎市内はもちろん、横浜市・都内からのご相談にも対応しています。

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この記事を担当した専門家
神奈川県弁護士会所属 代表弁護士 長谷山 尚城
保有資格弁護士 FP2級 AFP 宅地建物取引士試験合格(平成25年)
専門分野相続・不動産
経歴1998年 東京大学法学部卒業
2000年 司法試験合格
2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)
2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)
2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設
2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長
2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事
2020-23年 法テラス川崎副支部長
2024-25年 法テラス神奈川副所長
2025年~ 神奈川県弁護士会副会長
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