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寄与分が認められるのはどのような場合ですか?

2023.11.10

回答:被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付がある場合、また被相続人の療養監護をしていた場合

寄与分制度とは、共同相続人の中に、被相続人の財産の維持または形成に特別の寄与、貢献をした者がいる場合に、そのような貢献のない他の共同相続人と同等に取り扱い、法定相続分通りに分配するのは実質的に衡平を失することになることから、そのような場合に、相続財産の維持または形成に寄与した共同相続人について、法定相続分に寄与に相当する額を加えた財産の取得を認めて、共同相続人間の公平を図ろうとする制度です。

「特別の」寄与であることが要件なので、通常の夫婦の協力義務の範囲内のものや、親子や親族の扶養義務の範囲のものは寄与分として認められません。また、他の相続人も同等の寄与をしていれば、「特別の」寄与とは認められません。

寄与分が認められる典型例としては次のような場合があります:

① 被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付がある場合

ア 労務提供

例えば、被相続人は農業を営んでいたところ、結婚後も実家で父母と同居を続け、会社員として勤務する傍ら、農作業を手伝い、退職後は農業に専従していた場合に、農業従事を寄与分と認め、その評価額を農地の30%とした事案などがあります(大阪高決平成27106日)。

逆に、寄与分が認められなかった事例としては、被相続人の家業を手伝っており、夫婦合わせて大卒平均年収の半分程度の給与しかもらっていなかったが、その代わりに被相続人と同居し家賃や食費は被相続人が負担していたという事情を持って寄与分を認めなかったものがあります(札幌高決平成27年7月28日)。

イ 財産上の給付

被相続人名義の土地建物を取得する際に、原資を負担したり、相続人がローンを組んでいたりした場合に、寄与分を認めたものがあります。

 

② 被相続人の療養監護をしていた場合

寄与分が認められるのは、家族として一般的に要求される程度を超えた分に限られます。明確な基準はないものの、目安として、要介護2以上の状態にある被相続人を介護していた場合には、寄与分が認められることが多いとされています。具体的な金額の計算においては、第三者に介護を依頼した際に相当と認められる報酬額に、裁量的な割合を乗じて計算されることが多いです(上記のように、家族には扶養義務が存在していることから、第三者に介護を依頼した際と同額が寄与分として認められるわけではありません)。

この場合も、デイサービスを利用していた場合や、施設・病院に入所・入院していた場合には、その期間の寄与は認められないことになります(あるいは、認められるにしてもそれらの利用があることを加味して裁量的割合が決められます)。

 

この記事を担当した専門家
神奈川県弁護士会所属 代表弁護士 長谷山 尚城
保有資格弁護士 FP2級 AFP 宅地建物取引士試験合格(平成25年)
専門分野相続・不動産
経歴1998年 東京大学法学部卒業
2000年 司法試験合格
2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)
2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)
2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設
2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長
2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事
2020年~ 法テラス川崎副支部長
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