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遺産に収益物件が含まれている場合、遺産の評価額を決めるにあたって注意すべきことはありますか?誰に相談するのが良いのですか?

2022.10.02

回答:遺産分割協議においては、不動産の評価方法が問題となります。

まず、遺産分割における不動産の評価については、相続税申告の際における相続税評価額のように決まった計算方法があるわけではありません。そのため、遺産分割協議においては、不動産の評価方法が問題となります。

 

相続人間で不動産の評価額について合意ができる場合は、その額を前提として遺産分割協議をしていくことになります。

一方、相続人間で評価額につき合意が得られない場合、最終的には、裁判手続の中で、相続人それぞれが不動産の時価鑑定を行い、裁判所の判断に委ねることになります(この際、裁判所が選任した不動産鑑定士による鑑定などを行うこともあります)。

 

さて、もう少し具体的に評価方法についてみていきます。

 

不動産の評価額については、具体的には、
①地価公示価格(公示価格)
②路線価(相続税評価額)
③固定資産税評価額
④不動産業者の査定額
⑤不動産鑑定士による鑑定額、といったものを参考にしていくことになります。

 

居住用不動産の場合には、近隣での売却実績などがあれば、仮に双方に争いがあって複数の不動産会社に査定を依頼したとしても(④の方法)、ある程度の範囲内に評価額が落ち着くことが多いです(そうはいっても1000万円程度の差が出ることもあります)。

他方で、賃貸マンション・アパートなどの収益不動産の場合、収益性を考慮するかどうかで適正評価が争いになることが多いです。

そのための前提として、賃貸内容(賃料や期間)、管理状況(管理会社がしっかりしており未収金がないかなど)などをしっかり把握する必要があります。

 

なお、収益物件に関して、金融機関からの借り入れがある場合には、被相続人の死亡によって口座が凍結されてしまうと、ローンの返済が滞ってしまう場合がありますので、ご注意ください。
 

また、収益不動産の場合には、被相続人死亡後、遺産分割までの間の賃料を誰が取得するのか、という点も問題となります。

この点について、最高裁平成17年9月8日判決は、「相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない。」と判示しています。

すなわち、遺産分割で特定の収益物件を特定の相続人が取得することになっても、賃料についてはその特定の相続人が単独で取得するのではなく、相続人が法定相続分に応じて取得するということとなります。

この記事を担当した専門家
神奈川県弁護士会所属 代表弁護士 長谷山 尚城
保有資格弁護士 FP2級 AFP 宅地建物取引士試験合格(平成25年)
専門分野相続・不動産
経歴1998年 東京大学法学部卒業
2000年 司法試験合格
2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)
2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)
2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設
2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長
2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事
2020年~ 法テラス川崎副支部長
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