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遺留分の請求は自分でできる?リスクや流れについて弁護士が解説

はじめに

遺言書や生前贈与の影響で、自分の相続取り分(遺留分)が侵害されているかもしれない。
そう感じたとき、「自分で請求できるのか」「どこまでリスクがあるのか」が気になります。
本稿では、遺留分請求を自分で進めることは法的に可能か、具体的な流れ、注意すべきリスク、そして弁護士に依頼する意義を整理してお伝えします。

遺留分の請求は自分でできるのか?

結論から言えば、法律上は可能です。
遺留分侵害額請求は、弁護士でなければできない手続きではありません。
実際、内容証明郵便を自分で作成・送付したり、家庭裁判所での調停や訴訟を自身で申し立てることも認められています。
ただし、「可能」であることと「スムーズ・確実に進められること」は別物です。書式・証拠・交渉など、多くの知識と労力が必要となります。
以下で、請求の流れと、自力で進める際の落とし穴・リスクを見ていきましょう。

遺留分請求の流れ

自分で請求を始める際の典型的な手順は次のとおりです(弁護士に依頼する場合も基本構造は同じです)。

1. 遺留分侵害の確認と算定

まず、被相続人の財産目録を作成し、生前贈与・債務などを整理して、請求できる遺留分額を試算します。この段階で、評価方法や贈与の扱い、特別受益の有無などが争点になります。

2. 請求意思表示(内容証明郵便等)

相手(受遺者や贈与を受けた人)に対し、あなたが「遺留分侵害額を請求する」意思を正式に通知します。この通知は時効算定の基礎等の証拠になるため、内容証明郵便を使うのが一般的です。

3. 当事者間交渉(話し合い)

請求後は相手と金額・支払方法・期限などの交渉を行います。合意できれば、その通りの支払契約を結びます。

4. 調停申立て

話し合いで妥結しない場合、家庭裁判所に「遺留分侵害額請求調停」を申し立てます。調停委員を交えて協議を進めます。

5. 訴訟提起

調停が不成立となれば、最終的には訴訟を提起して裁判所に判断を仰ぎます。地方裁判所で審理されます。
この流れを自分でたどることは可能ですが、自分で行う場合には、各段階でミスや判断を誤るリスクがあります。

遺留分請求を自分で進めるリスク・注意点

自力で遺留分請求を進める際、特に注意すべきリスクを以下に整理します。

1. 計算ミス・算定誤り

遺留分の計算にあたっては、財産評価、贈与の扱い、特別受益、債務控除など、多くの要素を正確に取り込む必要があります。これを誤ると、本来請求できる額より少なく請求してしまったり、逆に過大請求で反論を招いたりします。

2. 手続きミス・書類不備

内容証明郵便の書式不備、調停・訴訟における申立書の不備、証拠書類の抜け、提出期限の失念などが致命傷になり得ます。

3. 時効管理の失敗

遺留分請求権には、相続および侵害を知ったときから1年、または相続開始から10年という消滅時効があります。特に「知ったときから1年」の方は気付いたらすぐに過ぎてしまいます。
請求を迷ったり手続をためらった結果、時効にかかってしまう例が少なくありません。

4. 相手方との関係悪化・感情的対立

相続関係者へのご自身での直接の請求は、親族間での対立を深める可能性があります。
感情的な反発を招くこともあり、話がこじれて長期化・紛争化するリスクがあります。

5. 証拠収集が困難

特に相手方が協力しない場合、生前贈与や資産隠しの証拠を集めるのは容易ではありません。弁護士であれば、弁護士会照会など手続的な手段を用いて調査支援を得られますが、個人では難しいという方もいらっしゃるかと思います。

6. 手間・時間・精神的コスト

自分で進めると、資料収集・計算・調停出頭・裁判出廷など、すべて自力で行う必要があります。その手間と負担などは決して軽くありません。

7. 相手が弁護士対応してくるケース

相手が弁護士を立てて対応してくると、法的知識の差で不利な展開を招く可能性があります。

これらのリスクを勘案すると、自力で進めることは可能でも、遺留分侵害額請求をご自身で進めるのは多くのケースでは不利になりやすいと言えます。

遺留分請求を弁護士に依頼するメリット

自力進行のリスクを回避し、より確実に主張を通すために、弁護士に依頼するメリットを以下に示します。

メリット

説明

正確な算定と主張立案

財産目録構成、贈与・特別受益の評価、法的な理論構成を的確に行える

手続きの安全性

書式・申立書・証拠提出の不備リスクを大幅に減らせる

時効管理と期限遵守

請求時期・内容証明の送付タイミングなど、戦略的に対応できる

交渉力・説得力

相手や調停委員を法的根拠に基づいた主張で説得できる

心理的・時間的負担軽減

当事者同士の直接やりとりを回避し、自分の負担を軽くできる(資料収集も専門家に任せた方が簡便)

訴訟・調停代理が可能

調停・訴訟について代理出廷でき、専門的な対応が可能

証拠収集支援

弁護士会照会による資料取得、裁判所提出資料の確認、司法書士・不動産業者・税理士等との調整なども任せられる

税務・相続全体の視点

遺留分以外の相続税や贈与税、登記対応も含めて総合的にアドバイスできる

特に、相続資産が大きい(遺留分を侵害されている額が大きい)、財産が複雑、贈与履歴が多い、相手方と関係が悪い、時効が迫っているなどの場合は、弁護士の関与が強く推奨されます。

遺留分に関するお悩みは当事務所にご相談ください

遺留分の請求を考える方は、以下のような不安や疑問を抱えているケースが多いでしょう
• 自分が遺留分を請求できるかどうか
• 遺留分額の正確な見積もり
• 相手に請求する方法・書面の書き方
• 話し合いができるか、調停や訴訟になるか
• 手続きの費用や見通し
当事務所では、遺留分請求の初期段階から、調停・訴訟対応まで一貫してサポートしています。
証拠整理・書面作成・交渉代理・相続税対応も含めて、あなたの立場を守る戦略をご提案します。まずは遺言・贈与の状況をお聞かせください。
あなたの権利が侵害されているかどうかを分析し、最適な対応方法を明確にご提示いたします。

この記事を担当した専門家
神奈川県弁護士会所属 代表弁護士 長谷山 尚城
保有資格弁護士 FP2級 AFP 宅地建物取引士試験合格(平成25年)
専門分野相続・不動産
経歴1998年 東京大学法学部卒業
2000年 司法試験合格
2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)
2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)
2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設
2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長
2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事
2020-23年 法テラス川崎副支部長
2024-25年 法テラス神奈川副所長
2025年~ 神奈川県弁護士会副会長
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