公正証書遺言を作成することは出来なかったが、同内容の自筆証書遺言を作成することによって依頼者の遺志が実現できた事案
- 2024.11.05
相談者属性
年代:70代
性別:男性
相談内容
私は、5年前に、武蔵小杉あおば法律事務所に相談をして、自分の財産をどのように分配するかを決めた遺言書を作成しました。
私には、配偶者や子ども、兄弟などもおらず、自分が亡くなった後の財産がどうなるか不安であったため、子どものようにかわいがっていた従兄弟の子ども3名に対して私の全財産を譲ることを決意し、同内容の遺言書を作成したものです(財産としては現預金の他、自宅があるくらいですが、自宅について売却処分の必要があったため、長谷山先生を遺言執行者に指定しておりました)。
先日、癌でステージ4という宣告を受け、余命が1ヶ月ほどと言われました。改めて考えたところ、従兄弟の子ども3名だけではなく、病中に看護をしてくれた友人2名にも財産を遺したいと考えるようになりました。
そこで、遺言書の内容を、全財産を換価して5名に渡すという内容に書き換えたいと思います。どうしたらいいでしょうか?
弁護士の対応
まずは、急いで、公正証書遺言の作成を公証役場に依頼しました。
しかし、当時は、公証役場が非常に混みあっていたこと、さらに依頼者の体調が悪く公証役場まで行くことはできず公証人を依頼者のもとへ出張してもらうための調整が必要だったため、作成が最短でも1ヶ月後になると言われてしまいました。
そこで、並行して、依頼者に、自筆証書遺言も作成してもらうことにしました。具体的には、以前の遺言書との修正部分について、最低限の訂正を行うこととして、訂正した書面に日付・署名・捺印などを記載してもらいました(この書面については内容・形式面を当事務所の弁護士が確認して問題ないことを確認した後、封筒の中に封印し、当事務所の弁護士が預かりました)。
残念ながら公正証書作成予定の日を前に、依頼者の体調が悪化して、亡くなってしまいました。
しかし、急ぎ準備をした自筆証書遺言があったため、当事務所の弁護士は、裁判所に対して自筆証書遺言の検認の申立をし、その後、正式に、遺言書の内容に沿って長谷山弁護士が遺言執行者に就任しました。
結果
遺言執行者の長谷山において、訂正した後の遺言書の趣旨にしたがって、全ての財産を換価して5名に対して渡すこととなりました。
依頼者の自宅不動産について、立地や古さの問題などから少し売却に難航したものの約1年をかけて、預貯金の解約、証券の換価、不動産の売却など全てが終了し、5名の方に分配することが出来ました。
弁護士所感
-
本件については、公正証書遺言を作成する予定でしたが、残念ながらその前に依頼者の体調が悪化し亡くなってしまいました。
-
しかし、並行して準備をしていた自筆証書遺言があったため、依頼者の遺志を実現することができました。
-
公正証書遺言は作成しようと思ってもすぐに作成できるものではありません。依頼者の体調が悪い場合などには、念のため、自筆証書遺言も並行して作成しておくことをお勧めします。
2000年 司法試験合格2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事2020年~ 法テラス川崎副支部長