8年前の不動産の廉価売買が遺留分侵害と認められた事例
- 2022.10.02
相談者属性
年代:50代
性別:女性
争点
8年前の不動産売買が廉価売買にあたり、当方の遺留分を侵害しないか
相談内容
父親が亡くなって相続が発生しました。母親は以前に亡くなっており、相続人は子供2名(兄と妹)です。私は妹です。
父親が兄と住んでいた不動産は横浜の一等地であり価値が相当あったのですが、調べたところ死亡の8年前に、その不動産について同居の兄に相当安い金額で販売されているようでした。
残った遺産はわずかしかないので、この不動産を兄が安く買い取った点に関連して何か権利の主張ができないでしょうか。
弁護士の対応
まずは、妹の代理人として調停の申し立てをしたのですが、相手方はそもそも8年前の土地についての売買は、廉価売買に当たらないと主張してきました。
これに対して、当方は当時の時価について不動産の査定書を出し、その当時の時価からすれば明らかな廉価売買にあたると主張しました。
調停で話がつかずに訴訟に移行しましたが、長男側は廉価売買に当たらないことに加えて、仮に廉価売買にあたったとしても、親族間の贈与に当たらないように税理士に確認した上での適正価格の売買という認識だったのでので、遺留分権利者を害する認識はなかったと主張してきました。
結果
その後、双方が不動産鑑定士による鑑定書を提出した上で、当職において粘り強く主張・立証を重ねた結果、裁判所からは、相手方が提出してきた方の不動産鑑定書を採用することを前提に、遺留分侵害の金額を確定し、それを元に和解すればどうか、という提案がありました。
最終的には、これを前提に話が進み、 遺留分として2000万円以上の金額の侵害を認め、それを支払う という和解が成立しました。
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弁護士所感
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8年前の不動産売買が相場より安かったことは事実ですが、税理士が親族間贈与にあたらないように金額を確認した上での売買だったので、受任当時は、相手方に当方を害する意図がなく、なかなか難しい事案でした。
最終的には、裁判所が当方の主張に理解を示してくれて和解をすることになったのですが、判決となるとどうなるかわからない事案だったので、よい和解だったと考えております。
2000年 司法試験合格2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事2020年~ 法テラス川崎副支部長