被相続人の生前に2億円を超える出金を発見したが、弁護士の関与により1億5000万円ほどの遺産を回収できた事案
- 2022.07.07
相談者属性
年代:50代
性別:女性
争点
使途不明金
相談内容
亡くなった母親が、亡くなる2年ほど前から長男と同居するようになったのですが、その後死亡するまでの2年間に2億円ほど預貯金が引き出されており、死亡時点での残金はわずか1,000万円になっています。長男は残った1,000万円を半々だと言っていますが、依頼者は長男が引き出したお金も戻してもらった上での遺産分割を行いたいため、当事務所に相談に来られ、受任となりました。
弁護士の対応
長男に対して引き出した2億円について説明を求めたものの何の回答もなかったため、2億円を遺産に戻すよう求める内容の訴訟を提起しました。
訴訟提起後も長男側は、「2億円については亡くなった母の医療費や、母の同意を得て自分の事業に使った。勝手に自分が使ったというのであれば、そちらの側で立証しろ。」などというばかりで全く話が進みませんでした。
裁判所は、立証責任は原告である長女側にあるという観点から消極的な印象を受けましたが、2億円のうち1億円は死亡直前の半年間に長男の事業に対する融資という形で行われていたため、当事務所の弁護士において協力医とともに当時の医療記録を精査しました。その上で、少なくとも死亡直前の半年間は相続人の判断能力は衰えており、1億円もの融資判断を行える状態ではなかったことを主張・立証しました。
結果
そうした立証活動が実を結び、相手方において1億5000万円ほどの使途不明金を認めそれを遺産に戻す形で、和解が成立ましした。-
弁護士所感
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今回の件のように、同居している相続人による使い込み事案というのは最近非常に多い印象を受けます。なかなか一緒に暮らしていない側からすると、その金が何に使われたのかの立証が難しい事案です。裁判官の考え方も色々あり、立証責任の原則からあくまで使い込みがあったと主張する側が立証すべきという裁判官と、実際にはお金を管理している側がある程度使途を説明して、それが合理的かどうかで判断をする裁判官と2つのタイプがいるように感じています。
本件事案も、当初は裁判官も前者の考え方のようでなかなか厳しい局面もあったのですが、医療記録を元に粘り強く主張・立証を重ねた結果、途中から裁判所の心証が代わり、当方にとって有利な和解ができたと考えています。
2000年 司法試験合格2002年 司法修習終了(第55期) 東京あおば法律事務所に所属(東京弁護士会)2004年 山鹿ひまわり基金法律事務所を開設(弁護士過疎対策・熊本県弁護士会)2009年 武蔵小杉あおば法律事務所 開設2014-15年 弁護士会川崎支部副支部長2019-20年 川崎中ロータリークラブ幹事2020年~ 法テラス川崎副支部長